ヴァージル・アブロー 出典:Wikimedia Commons(Myles Kalus Anak Jihem)
ストリート・ブランド、Off-Whiteのデザイナーやルイ・ヴィトンのメンズウェアのクリエイティブ・ディレクターとして知られるヴァージル・アブロー氏が、アメリカ現地時間11月28日に死去した。享年41。
ヴァージル・アブロー氏は1980年アメリカ合衆国イリノイ州ロックフォード生まれ。2002年ウィスコンシン大学マディソン校では土木工学の学士号を取得した後、イリノイ工科大学の修士課程で建築を学んだ。同大学在学中、キャンパス内にあるレム・コールハースの建造物(マコーミック・トリビューン・キャンパス・センター)を見たことをきっかけにファッションに興味を持つようになったという。この時期、カニエ・ウェスト(イェ)と出会う。
その後、フェンディのインターンシップ、カニエ・ウェストとジェイ・Zの音楽アルバム『Watch The Throne』のアートディレクター、初の自身のファッションブランドPyrex Vision設立・閉鎖を経て、2013年にOff-Whiteを設立した。象徴的な斜線ロゴで知られるOff-Whiteだが、ストリートウェア、ラグジュアリー、アート、音楽、旅行などのアイデアを組み合わせて展開してきたという。2018年には、ルイ・ヴィトンのメンズウェアのクリエイティブ・ディレクターに就任し、アブロー氏をさらなる世界的な著名人へと押し上げた。
ルイ・ヴィトンでの初のコレクション披露となった2019年春夏メンズコレクションのショーの後、ウェストと硬い抱擁を交わし涙を見せるふたりの姿も話題となった。
日本のストリートファッションに影響を受けたことを公言し、つながりも深いアブロー氏。2016年には自身初のコンセプトストアを東京・青山にオープンし、18年にはアーティストの村上隆とコラボレーションした二人展「Murakami & Abloh: “future history”」をロンドンのギャラリー、ガゴシアンにて開催。2000年半ばに東京でNIGO®と会い感銘を受けたというアブロー氏は、昨年より「ルイ・ヴィトン LV スクエアード コレクション」として、NIGO®と2度にわたるコラボレーションを行ってきた。
2019年には、シカゴ現代美術館にて建築、ファッション、音楽まで多岐にわたるアブロー氏の思想を明らかにする大規模個展「Virgil Abloh: Figures of Speech」を開催したことも話題になったが、その個展に先んじて2018年、元麻布にあるカイカイキキギャラリーで世界初個展「”PAY PER VIEW”」を開催。消費社会、広告、メディアをテーマとした本展は、「ゲームチェンジャー(シーンの流れを一気に変えるような人物)」とも称されるアブロー氏の勢いと明確なスタイルを伝えるものだった。
その翌年にはエスパス ルイ・ヴィトン東京にて、アブロー氏によるキュレーション展「COMING OF AGE」を開催。ベテランから若手まで21名のアーティストが集まる本展は、氏の関心の広さとストリートへの思慕と敬意がうかがえるもので、どちらの展覧会も領域を超え縦横無尽に広がる探究心とその思いの深さが強い印象を残していた。
アブロー氏の死因は心臓血管肉腫という癌で、2019年から病を公にせず闘病してきたという。突然の訃報を受け、親交の深かった村上隆やダニエル・アーシャム、KAWS、キム・ジョーンズ、トム・サックス、アレッサンドロ・ミケーレ、ラフ・シモンズら多くの著名人がSNSで追悼の意を表している。
野路千晶(編集部)
野路千晶(編集部)