公開日:2025年4月7日

「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」展が東京ステーションギャラリーで開幕。フィンランドの自然が生んだ“かたち”の詩学

フィンランドのモダンデザインを代表するデザイナー、タピオ・ヴィルカラの知られざる全貌に迫る展覧会。会期は4月5日〜6月15日

会場風景

東京駅丸の内南口直結の東京ステーションギャラリーでフィンランドのモダンデザイン界において圧倒的な存在感を放つタピオ・ヴィルカラの日本初となる回顧展、「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て」が開幕した。会期は6月15日まで。

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タピオ・ヴィルカラ(1915〜85)は、ガラス、磁器、金属、木材、紙など多彩な素材を自在に操り、日用品から紙幣、切手、彫刻、さらにはランドアートまで、ジャンルの枠を超えて活動を展開してきたデザイナーでありアーティストだ。世界的に評価を受けるいっぽうで、日本ではこれまで「北欧のガラスデザイナー」の枠にとどまって語られることが多かった。

本展は、ヴィルカラの生誕110年・没後40年という節目の年に開催され、彼の多面的な創作活動を初めて包括的に紹介する貴重な機会となる。自然をインスピレーション源とし、素材と空間への深い理解をもとに生み出された作品群を通じて、その造形美と思想の広がりに触れることができる。

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1915年、南フィンランドの港町ハンコに生まれたヴィルカラは、彫刻家で墓地の設計士だった父、木彫やテキスタイル制作に携わる母のもとで育ち、やがてヘルシンキの美術学校で装飾彫刻を学んだ。戦争やグラフィックデザインの仕事を経て、1946年、イッタラのデザインコンペで優勝。これをきっかけに同社で約40年にわたるキャリアをスタートさせる。

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展示は2フロアにわたって構成されている。3階では、イッタラをはじめとしたプロダクトデザインの仕事を紹介。幾何学と自然のフォルムが融合したデザインは、機能性と美しさを兼ね備え、長く人々に愛されてきた理由を体感させる。

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2階は、ヴィルカラが1950年代から取り組んだガラスや木によるオブジェやユニークピースに焦点を当てる。彫刻的アプローチが際立つこれらの作品からは、少量生産ゆえの自由さや、職人の高度な技術、さらには実現に至らなかったランドアートの構想まで、“表現者”としてのヴィルカラの活動を明らかにする。

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そして最後の章では、1965年より交流を深めたヴェネチア・ムラーノ島の老舗ガラス工房ヴェニーニとの協働に着目。外部デザイナーの受け入れを稀とするヴェネチアの伝統工房において、ヴィルカラは豊かな色彩と技法に魅了され、毎年のように滞在。職人たちとの緻密な対話を重ねながら制作したガラス作品には、国境や言語を超えた創造のエネルギーが凝縮されている。

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素材と静かに向き合いながら、独自の造形言語を築いてきたヴィルカラ。本展は、その創作のプロセスに深く迫るとともに、これまで知られてこなかったヴィルカラの真の姿を発見することができるだろう。


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