アメリカにおける国立図書館に相当するアメリカ議会図書館(Library of Congress)に、ゲーム音楽としてはじめて、任天堂の近藤浩治が作曲した『スーパーマリオブラザーズ』の地上BGMが収蔵された。2023年度は、同作とともにマドンナ『ライク・ア・バージン』、マライア・キャリー『恋人たちのクリスマス』、ジョン・レノン『イマジン』など数々の歴史的なヒットソング、変わったところでは天文学者・SF作家のカール・セーガンが自著『ペール・ブルー・ドット』を朗読する音源も収蔵される。
同図書館は2800万冊以上の国内外の図書資料に加え、地図、新聞、楽譜、マイクロフィルム、映画、写真、レコードなども収蔵している。スーパーマリオの地上BGMは、ビデオゲームのサウンドトラックとして初の収蔵対象となる。
同館ホームページでは「1980年代に『スーパーマリオブラザーズ』の音楽を担当し、現在も任天堂で作曲を手掛ける近藤浩治ほど、数十年にもわたって作品が世界的に認知されつつも、その知名度に比較して無名な音楽家はいない。1985年に発売された同作のメインテーマ「地上のテーマ(地上BGM)」は、ラテン系の陽気なメロディで、現在でも世界中で親しまれている」と同作を高く評価している。また同解説内で近藤は、以下のコメントを寄せている。
音楽と効果音に使えるデータ量が極端に少なかったので、当時の音楽とプログラミングの工夫を駆使し、革新的なものにしなければなりませんでした
ゲームオーバーになったプレイヤーに再挑戦を促すジングル、ゴール達成を讃えるファンファーレ、残り時間が短くなるとスピードアップしていく曲など、ゲームの画面で起こっていることに合わせて、あらゆるジャンルを駆使しました。
現在は任天堂社内でサウンドスタッフの指導的立場にある近藤は、「スーパーマリオ」シリーズのほかにも「ゼルダの伝説」シリーズや『スパルタンX』の効果音を手掛けるなど、ゲーム音楽のパイオニアのひとりだ。先週末に公開されるや、推定3億6800万ドルというアニメーション映画史上最高の全世界オープニング興行収入を記録した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(日本国内では4月28日公開)にも、近藤のオリジナル音源は使用されている。
2013年にニューヨーク近代美術館(MoMA)に14本のビデオゲームが収蔵されるなど、アートや文化史の側面で評価を高めつつあるビデオゲーム。今回の「地上BGM」の収蔵は、その歴史に新たな1ページを加える偉業と言えるだろう。