公開日:2025年4月3日

「トーベとムーミン展」が六本木・森アーツセンターギャラリーで7月開催。約300点からトーベ・ヤンソンの創作世界をたどる

初期の油彩画や第二次世界大戦前後の風刺画、『ムーミン』の原画やスケッチ、愛用品などが一挙集結。会期は7月16日〜9月17日。

『ムーミン』小説出版80周年記念、約300点が集結

「ムーミン」の生みの親であり、絵画や風刺画、漫画、絵本、小説など多方面に才能を発揮したアーティスト、トーベ・ヤンソン(1914〜2001)。その創作世界に迫る展覧会「トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~」が、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催される。会期は7月16日から9月17日まで。

トーベ・ヤンソン ムーミンたちとの自画像 1952 インク、紙 ムーミンキャラクターズコレクション © Moomin Characters™

本展は『ムーミン』小説の第1作である『小さなトロールと大きな洪水』の出版から2025年で80周年を迎えることを記念して、フィンランド・ヘルシンキ市立美術館の協力のもとで開催される展覧会。モダニズムと現代アートを中心に1万1000点以上の作品を収蔵するヘルシンキ市立美術館では、2026年に新しくトーベ・ヤンソン・ギャラリーをオープンさせる。

今回の展覧会では、トーベによる初期の油彩画や第二次世界大戦前後の風刺画、『ムーミン』小説・コミックスの原画やスケッチ、愛用品など約300点を通して、トーベの創作の世界を振り返るとともに、彼女の人生が色濃く反映された『ムーミン』シリーズの魅力に迫る。

トーベ・ヤンソン 煙草を吸う娘(自画像) 1940 油彩、キャンバス 個人蔵 © Tove Jansson Estate Photo © Finnish National Gallery Yehia Eweis

『ムーミン』だけでない、トーベの創作

子供の頃から画家を志し、挿絵画家だった母シグネの影響を受けて若い頃から雑誌の挿絵で才能を発揮していたトーベ。第二次世界大戦後の復興期には、市庁舎や病院、保育園など、公共施設の壁画も多数手がけた。また政治風刺雑誌『ガルム』では、1953年の廃刊まで20年以上にわたって活躍し、その表紙絵からは反戦への思いもうかがえる。

雑誌『ガルム』 1945 イースター号 ムーミンキャラクターズコレクション © Tove Jansson Estate

1945年から1970年にわたって全9冊が刊行された『ムーミン』の小説は、戦争中の辛い日々からの救いの場として書き始められ、ストーリーも挿絵もすべてトーベが手がけた。さらに1952年には最初の『ムーミン』絵本が刊行され、1954年にはイギリスの新聞で連載マンガがスタート。世界的な人気を獲得していく。本展では、『ムーミン』作品に加え、学生時代から1960年代前半までの油彩画を展示。印象派からの影響や抽象画への移行など、トーベの画業の変遷をたどることができる。

トーベ・ヤンソン 『ムーミン谷の彗星』挿絵 1946 インク・水彩、紙 ムーミンキャラクターズコレクション © Moomin Characters™
トーベ・ヤンソン 新聞連載マンガ「ひとりぼっちのムーミン」スケッチ 1954-55頃 鉛筆、紙 ムーミンキャラクターズコレクション © Moomin Characters™

ムーミンや仲間たちを描いた250点超の作品が集結

また、『ムーミン』小説やコミックス、絵本『ムーミン谷へのふしぎな旅』、キャラクターのスケッチなど、ムーミンや仲間たちを描いた250点以上の作品が一挙集結。

トーベ・ヤンソン おはよう 制作年不詳 インク、紙 ムーミンキャラクターズコレクション © Moomin Characters™

トーベが手がけたアウロラ病院小児病棟の壁画のためのコンペティションに提出した作品《遊び》のスケッチには、楽しげなムーミンたちの姿が描かれており、本展の見どころのひとつだ。

トーベ・ヤンソン 遊び1(アウロラ病院小児病棟の壁画のためのコンペティション用スケッチ) 1955 テンペラ、キャンバス ヘルシンキ市立美術館 © Moomin Characters™ Photo © HAM / Hanna Rikkonen
トーベ・ヤンソン 遊び2(アウロラ病院小児病棟の壁画のためのコンペティション用スケッチ) 1955 テンペラ、キャンバス ヘルシンキ市立美術館 © Moomin Characters™ Photo © HAM / Hanna Rikkonen

保育園のために描かれた壁画を原寸大映像で体感

さらに、フィンランド・コトカ市の保育園のために描かれた壁画《フェアリーテイル・パノラマ》を、2面あわせて幅約7mの原寸大映像で紹介。一角獣など多様な生き物が行進する美しい場面には、ムーミンや仲間たちの姿も描かれている。『ムーミン』小説の挿絵なども映像で紹介され、ムーミンたちの世界を体感できる展示となる。

トーベ・ヤンソン フェアリーテイル・パノラマ(左面) 1949 フレスコ・セッコ フィンランド・コトカ市 © Moomin Characters™ Photo © HAM / Maija Toivanen ※映像で紹介予定
トーベ・ヤンソン フェアリーテイル・パノラマ(右面) 1949 フレスコ・セッコ フィンランド・コトカ市 © Moomin Characters™ Photo © HAM / Maija Toivanen ※映像で紹介予定

ヘルシンキ市立美術館のキュレーター、ヘリ・ハルニは本展について以下のようにコメントしている。

トーベ・ヤンソンはフィンランドで最も愛されているアーティストの一人です。しかしムーミンへ関心が集中するあまり、彼女の芸術上のキャリアの全体像が見えづらくなっていました。ムーミンが商業的に成功したことによってトーベは有名になりましたが、実際には、挿絵、絵画、公共施設の壁画など多方面で活躍しました。これまであまり知られていなかった作品の展示を通して彼女の才能の奥深さを明らかにします。本展は、輝かしい存在でありながらも見過ごされてきた女性アーティストというコンテクストのなかで、彼女の功績に焦点を当てていきます。

ムーミン小説の印象的な挿絵の映像演出  © Moomin Characters™ ※東京会場での演出イメージ図。内容は変更となる場合あり

全国で巡回展も

なお本展は、東京会場を皮切りに、全国に巡回予定。10月1日〜11月24日に北海道立近代美術館、2026年2月7日〜4月12日に長野県立美術館、4月〜6月に愛知・松坂屋美術館で行われる予定だ。詳細は、決定次第、展覧会公式サイトにて発表される。

「トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~」

会期:7月16日~9月17日
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52 階)

※開館時間、休館日、観覧料、チケット発売日は決定次第、公式サイトで公開

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