東京の街中で、突然自動車のルーフパネル(屋根)にペインティングを始めるアーティストたちの姿が目撃されている。場所は中目黒、代々木公園、表参道、代官山とバラバラで、それぞれアーティストたちも違う。しかし、そこには一つの共通点があった。ペインティングされた自動車は、全て「MINI」だったのだ。
中目黒駅からほど近い目黒川沿いでは、アーティストでありデザイナーでもあるJay ShogoたちがMINIのルーフに桜のイラストを描いている様子が目撃され、YouTubeにも動画がアップされている。動画はアーティスト本人によってヘッドカメラで撮影されたもの。動画に写り込んでいる目黒川の桜も、ちょうど満開の時期だ。散歩中の人たちが興味を惹かれて集まってくる様子もリアル。MINIのルーフに桜が満開になったところで、動画は終了する。
一方、代々木公園では、NOIZ-DAVI、山本大輔、XOLA、佐川友星たちによるアート集団、輪派絵師団(りんぱえしだん)がゲリラペインティングを実行。4人は代々木公園の屋台でケバブやたこ焼きなどを食べた後、路肩に止まっているイエローとブラックのツートーンカラーのMINI Cooperを発見。おもむろに近づき、突如ペイントを始める。通りがかりの人たちや子供たちを巻き込みながら、ブラック一色だったルーフが鮮やかに彩られていく。そして最終的には、花、草木、鹿などが描かれた作品が出来上がった。
表参道では、『テラスハウス』への出演でも話題になったアーティストFrankie Cihiが、MINIのホワイト色のルーフにライブペインティングを行った。自動車やバイクが行き交う中、パーキングメーター前に停められたMINIにペイントを行う様子に周囲の人たちも興味を惹かれずにはいられない。ペインティングの様子は早回しの映像で収められ、最後には白いルーフにグリーンが映える爽やかな草木のイラストが出現。アーティストの名前の頭文字と思われる「ふ」という文字を描き入れて完成だ。
代官山に現れたのは、ライブペインティングや壁画制作を中心に活動するアートユニット、Whole9の二人。二人はまず太い刷毛を使って、サイケデリックな色彩でMINIのルーフを大胆に塗り替えていく。ゲリラ的に実施されるライブペイントは注目を浴び、周囲には人だかりが出来ていく。そしてカラフルな背景の上に描き込まれる、咆哮するヒョウのイラスト。力強さを感じさせる独自の世界が生まれた。
4組のアーティストたちがMINIをターゲットに行ったこれらのゲリラペインティング。実はビー・エム・ダブリュー株式会社による「MINIルーフ自由化計画」というプロジェクトの一環だった。「MINIルーフ自由化計画」とは、退屈な日本の道路を楽しく変えるため、MINIのルーフを自由にデザインできる新しい試みのこと。キャンペーンは2015年4月1日からスタートしている。
そこで、同社はMINIの試みに賛同するアーティスト4組に対して極秘依頼を行い、ゲリラアートを実施。彼らは、開かれた空間である公道でMINIのルーフを自由にデザインし、クルマの新しい可能性を提示してみせた。
これまで黒、白、シルバーなど決まりきった色ばかりだったクルマのルーフが無個性から解放されることで、日本の道路はもっとカラフルに、もっと楽しくなる。その第一歩が「MINIルーフ自由化計画」。4組のアーティストが遂行したゲリラアートは、その始まりに過ぎなかったのだ。
■ウェブサイト
MINIルーフ自由化計画
・Jay Shogo
・輪派絵師団
・Frankie Cihi
・Whole9
(Text: 玉田光史郎 Koushiro Tamada)