DIC川村記念美術館外観 撮影:高橋マナミ
昨年12月、規模縮小と東京都内へ移転が発表されていた、DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)。化学メーカーDIC株式会社(社長執行役員:池田尚志)が所有・運営する同館の今後の方針が明らかになった。
3月12日、DIC株式会社と公益財団法人国際文化会館(理事長:近藤正晃ジェームス)は、アート・建築分野を起点とする協業に合意したことを発表。
DIC川村記念美術館は、卓越した戦後アメリカ美術を中心とする20世紀美術品を所蔵するが、そのコレクションを中核に東京・六本木の国際文化会館へと移転する。
コレクションを代表するマーク・ロスコの「シーグラム壁画」7点すべては、国際文化会館が建設する新西館へと移設。建築ユニットSANAAが設計する常設展示室「ロスコ・ルーム」が開設される。新設「ロスコ・ルーム」はDICと国際文化会館が共同運営し、アート・建築の力によって民間外交・国際文化交流を推進する公益プログラムの充実を図る。
上記の公益プログラムを充実させるうえで、アート・建築界を代表する有識者・アドバイザーの諮問・協力を得る予定だという。
■DIC株式会社 社長執行役員池田尚志からのコメント
当社にとって美術館運営は、より多くの人々の心に「彩りと快適」を届ける機会として、また企業と社会の共生の在り方を体現するものとして、大切にしてきたものです。この度、国際社会において文化交流と知的協力の中心的な役割を担われてきた国際文化会館様と、より大きな理念の下でこの活動を発展させていく機会をいただけたことに、心から感謝しております。それぞれに培ってきた伝統を大切にしながら、民間企業と公益財団による新たな価値の創造に向けて鋭意努力してまいります。
■公益財団法人国際文化会館 理事長 近藤正晃ジェームスからのコメント
国際秩序が揺らぎ、国家間の対立が深まる中で、民間外交や国際文化交流の重要性は一層高まります。
SANAAが設計する常設展示室「ロスコ・ルーム」が、対立する人々の心に静かな内省をもたらし、共感の輪を広げ、相互理解を深めることで、平和を生み出す場となるならば、それはまさに歴史的な意義を持つことでしょう。このような公益プログラムをDIC様と共同運営できることに、心から感謝しています。
■Kate Rothko Prizel 並びにChristopher Rothko(マーク・ロスコご遺族)からのコメント
DIC川村記念美術館とその象徴的なコレクションは、アート愛好家に長年愛されてきましたが、新たに東京に拠点を移しても、その価値観は受け継がれ、さらに多くの来館者が美を堪能できることでしょう。
なかでも、ロスコを象徴する<シーグラム壁画>7点を展示するためのロスコ・ルームは魅力的な瞑想空間であり、新しい美術館で再現されることをとても喜んでおります。
■建築ユニット SANAAからのコメント
国際文化会館は日本モダニズム建築の代表作である本館と、七代目小川治兵衛による名勝の庭園が見事に調和した空間となっています。私どもが新西館を設計する上では、自然と建築の融合、歴史の継承と新しい風景、知的対話・文化交流を生み出す空間という3つのコンセプトを建築として具現化できるよう設計してまいりました。この度、世界的な文化財である<シーグラム壁画>の「ロスコ・ルーム」を設計するという機会に巡り合う事ができ大変光栄に思います。