東京にあるパナソニック汐留美術館が2025年の展覧会スケジュールを発表。著名な建築家ル・コルビュジエの後期絵画にフォーカスした展覧会をはじめ、注目の企画が目白押しだ。
パナソニック汐留美術館で2025年1月11日〜3月23日に、「ル・コルビュジエ──諸芸術の綜合 1930-1965」が開催される。本展は建築家ル・コルビュジエ(1887〜1965)後期の絵画に注目した日本では初めての展覧会となる。
ル・コルビュジエは活動の後半期において、建築の指揮のもとで絵画や彫刻をつなぐ試みを「諸芸術の綜合」と言い表した。また「諸芸術の綜合」とは統一、調和、普遍的法則の理想主義に導かれたル・コルビュジエの芸術観全体を示すスローガンでもあった。
この言葉をタイトルに関した本展は4章で構成され、国内外から借用した作品約90点(絵画、彫刻、素描、タペストリー、図面、模型、ルシアン・エルヴェの写真作品)他写真資料を紹介。
ゲスト・キュレーターにドイツの美術史家ロバート・ヴォイチュツケを迎え、20世紀の革新的頭脳の創造の源泉に迫る。また本展はル・コルビュジエ財団の協力のもと開催される。会場構成はウルトラスタジオが担当。
注目はやはり絵画作品だ。活動前半期に焦点をあてた「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」展(国立西洋美術館、2019 )に続き、本展は40 歳代以降の円熟期の創作にスポットを当てる。たとえば3連画として展示する《牡牛XVI》《牡牛XVIII》《牡牛》(未完・遺作)は、人間の生命力と精神の進化を象徴的に表した「牡牛」シリーズの集大成だ。
またフェルナン・レジェ(1881〜1955)、ジャン(ハンス)・アルプ(886〜1966)、カンディンスキー(1866〜1944)といった同時代に活躍した先駆的な芸術家たちの作品を対峙させることで、当時の芸術潮流におけるル・コルビュジエの立ち位置も浮かび上がらせる。
ル・コルビュジエは1954年に論考「やがてすべては海へと至る」を執筆。テクノロジーの発達により高度にネットワーク化、グローバル化が進む情報化社会の到来を予見していた本テキストを元に、マルチメディア芸術の先駆けともいえる彼の作品も紹介する。
たとえば「知のミュージアム」計画では、ル・コルビュジエはインド初の女性建築家ウルミラー・エリー・チョードリー(1923〜1995)と協働し、未来の人工知能AIをも予知するかのようなプロジェクトを構想した。こうしたル・コルビュジエの先進性を新たな角度から再考するものになりそうだ。
続いて同館では、2025年4月12日〜6月22日に「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン-光の夢、影の輝き」を開催する。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの画家オディロン・ルドン(1840〜1916)。本展では伝統と革新の狭間で独自の芸術世界を開花させたルドンの生涯とその生きた時代にも焦点を当て、岐阜県立美術館の所蔵品を中心に最初期から晩年までの画業を紹介する。
2025年7月12日〜9月15日に開催される「ピクチャレスク陶芸 アートを楽しむやきもの-民藝から現代まで」。
本展では絵画的な表現を持った陶芸作品や絵画から影響を受けた陶芸などを「ピクチャレスク陶芸」ととらえ、20〜21世紀の日本の陶芸を横断的に紹介する。民藝からうつわ、伝統工芸、前衛陶芸、コンテンポラリーまでを含む約80点が集結。アートの視点から日本近現代陶芸史の一面を俯瞰する。
2025年10月4日〜12月17日には、ウィーン文化の多面な魅力を紹介する「ウィーン・スタイル-ビーダーマイヤーと世紀末 ライフスタイルとしてのデザイン」が開催。
19世紀末から20世紀初頭のウィーンにおける優れたデザインや装飾がみられる家具や工芸作品などのモダンな作品群、またそれらの近代的なスタイルのルーツのひとつであるビーダーマイヤー時代の工芸作品を紹介する。
銀器、陶磁器、ガラス、ジュエリー、衣装、インテリアなど、このふたつの時代に制作された工芸とデザインを通して、ウィーンにおける「総合芸術」の精神を明らかにする。
これまで日本ではあまり知られてこなかった女性の先駆的なデザイナー・クリエイターにも焦点を当てるという。