学生による油絵の振興などを目的に日本学生油絵会が主催し、70年以上の歴史を持つ公募展「学展」。幼児から大人まで幅広い年齢層に作品発表の場を提供し、若手の登竜門にもなってきた。近年では、公募展の役割に加え、受賞作品展での「ゲストアーティスト企画」の実施や大賞作品をパリの「サロン・デ・ボザール)」に出品するなど、若いアーティストの活躍の場を広げる企画を積極的に行ってきたが、今年2022年から新プロジェクト「ANS.(アンス)」がスタートした。
ANS.(アンス)は、Art + New + Senseの略称。主にアートやデザインを志す学生や若手作家を対象に、異領域で活動する人間同士がつながり、アイディアを共有できる場を提供し、新たなクリエーション創出の起点になることを目指している。
その第1弾の試みとして、学展特別展示「UNKNOWN VISITORS」が東京・六本木の国立新美術館で8月11日から21日まで開催されている。学展の第72回受賞作品展との同時開催で、特別展示のキュレーションは、第66回の大賞受賞者であるアーティスト水野幸司が担当した。出品作家は岸裕真、芝田日菜、友沢こたお、布施琳太郎、星加曜、水野の新進6名。会場は、水野が掲げた「接蝕」のキーワードを軸に、絵画や映像、音響などの多様な表現方法を用いた作品が一つの空間に並ぶ。
岸裕真の《big chair (divided)》(2021)は、無数の椅子の形状データを解体し、テクスチャーを与えた立体作品。芝田日菜の映像作品《影をみる》《水面に映る家》(2022)は、キノコをはじめ生物への関心から、身体の内部と外側の世界との関係性を主題に制作した。スライムが顔面を覆うようにかけられたイメージを通し抑圧される人間の内面を表現する友沢こたおの絵画《slime CXXX》(2022)、熱により画面が変色・変化するドローイングを人間の過去(歴史)のあり方に重ねた布施琳太郎の《 》(2022)。星加曜は頭部を模した黒い3つのオブジェとヘッドホンからなる立体・音響作品《不在の星々、瞑想の再生》(2022)、水野幸司は鯨への関心から制作したドローイングと詩の作品群《未明の声》(2022)を発表している。
勢いがある若手の鮮烈な個性に触れることができる「UNKNOWN VISITORS」展。作家による本展示をテーマとした討論の様子も学展の公式YouTubeチャンネルで公開されている。
「第72回学展 アート&デザインアワード」「UNKNOWN VISITORS」
会期:2022年8月11日〜8月21日
会場:国立新美術館
開場時間:10:00〜18:00
休館日:火
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