公開日:2024年1月19日

アートとAI、知っておきたい40の出来事を総ざらい。アート×AI年表 2018〜23【特集:AI時代のアート】

「初の試み・新たな動き」「事件」「オピニオン」「法」の観点から、AIとアートに関する40のニュースをピックアップ(年表協力:宮本裕人)

Midjourneyを使って描かれた、ジェイソン・マイケル・アレンによる《Théâtre D’opéra Spatial》(2022)。アートコンテスト「Colorado State Fair」のデジタルアート部門で1位を獲得した

アートとAIに関する、ここ数年のニュースを総ざらい。「初の試み・新たな動き」「事件」「オピニオン」「法」の観点から40のニュースをピックアップして紹介する。画像生成AI「Midjourney」がサービスを開始した2022年、そしてChatGPTが社会にインパクトを与え「生成AI元年」と呼ばれた2023年。その前後ではニュースの量も傾向も大きく変わったことがわかる。

2018〜19年:AIが描いた作品がオークションに世界初出品

2018年10月
AIが描いた作品が世界初出品

クリスティーズで行われたオークションに、パリを拠点とするグループ「Obvious」がAIを使って制作した作品《Edmond De Belamy(エドモンド・ベラミーの肖像)》が出品された。予想落札価格の43倍となる約4800万円で落札された。国内外で大きなニュースとなる。

Obvious Edmond de Belamy 2018

2019年5月
ロンドンで「AI: More than Human」展が開催
200点以上に及ぶ資料や作品を通して、AIの科学文化史、現代社会における応用例と課題、そしてAIの未来を読み解くような展覧会がバービカン・センターで行われた。日本からはチームラボの作品や、池上高志、土井樹、石黒浩、小川浩平のアンドロイド作品《Alter 3》が出品。

チームラボ 世界はこんなにもやさしく、うつくしい / What a Loving, and Beautiful World 2011-

2019年6月
世界初のヒューマノイドアーティストが個展開催

オックスフォード大学が開発した世界初のヒューマノイドアーティスト「Ai-Da」が、個展「Unsecured Futures」を開催。Ai-Daが制作したデッサン、絵画、彫刻、ビデオアートなどが展示された。

ヒューマノイドアーティスト「Ai-Da」 出典:公式ウェブサイト(https://www.ai-darobot.com/)

2020〜21年:作品復元や贋作判定に活用されるAI

2020年4月
カリフォルニアで「Uncanny Valley: Being Human in the Age of AI」が開催

シリコンバレーからほど近いデ・ヤング美術館で、人類がまだ完全に理解していないAIというテクノロジーに依存していることに警鐘を鳴らす展覧会が行われた。参加作家はイアン・チェン、サイモン・デニー、フォレンジック・アーキテクチャー、ピエール・ユイグ、ヒト・シュタイエルら。

ザック・ブラス The Doors 「Uncanny Valley: Being Human in the Age of AI」(デ・ヤング美術館、カリフォルニア、2020)

2021年3月
世界初のAIロボットによるNFT作品が落札

AIロボット「ソフィア」によるNFTのデジタルアート作品《Sophia Instantiation》が、マーケットプレイス「Nifty Gateway」で行われたオークションにて約7500万円で落札された。

「Nifty Gateway」ウェブサイトより 

2021年6月
レンブラントの《夜警》をAIで復元

アムステルダム国立美術館は、同館の代表所蔵作品であるレンブラントの《夜警》の欠損部分の復元を、AIを用いて行ったと発表。約300年ぶりに本来の姿が披露された。

レンブラント・ファン・レイン 夜警(フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ライテンブルフ副隊長の市民隊) 1642 アムステルダム国立美術館蔵

2021年7月
サーペンタイン・ギャラリーがKing's College Londonと共同で「Creative AI Lab」を発足

アーティスト、エンジニア、研究者、文化施設とともに、「AIがアーティストをいかに支援するか」「AIによってアートやキュレーションのあり方はいかに変わるか」といった問いを探究するリサーチプログラムが発足した。

2021年9月
10億円の絵画がAIで偽物判定

ロンドンのナショナルギャラリーが所蔵するピーテル・パウル・ルーベンス作とされていた絵画《サムソンとデリラ》が、AIによる分析の結果、91.78%の確率で違う作者のものだと判定された。

ピーテル・パウル・ルーベンス サムソンとデリラ(ルーベンス) 1609 ナショナルギャラリー蔵

2022年:生成AI元年、様々なサービスが始まる

2022年2月
星新一賞に「AIと作った小説」が初入選

文学賞「星新一賞」で初めて、AIを使って執筆した小説が入選した。一般部門優秀賞を受賞した葦沢かもめの『あなたはそこにいますか?』は、AIが生成したあらすじを基に執筆されている。

2022年7月
メタがAIペイントツールを発表

米メタ(旧フェイスブック)が、AIを用いて画像生成を行うペイントツール「Make-A-Scene」を発表。テキストと簡単なスケッチだけで、より精度の高い画像を作成することができる。

画像生成AI「Midjourney」がサービス開始
サンフランシスコを拠点とする独立研究所・Midjourney, Inc.が、テキストのプロンプトから画像を生成できるAIサービス「Midjourney」をベータ版として公開した。

Midjourneyのウェブサイト

2022年8月
日本のAIイラスト生成サービス、1日で終了

既存のイラストの作風を真似て画像を生成するサービス「mimic」が公開されるも、悪用・盗用が懸念され1日でサービス終了。その後11月に不正利用対策をしたうえでβ版2.0が、2023年2月に正式版が公開された。

画像生成AI「Stable Diffusion」がサービス開始
イギリスのスタートアップ・Stability AIが、テキストをもとにイメージを作る画像生成AI「Stable Diffusion」を公開した。

2022年9月
GettyがAI生成画像の登録を禁止

ストック画像サービスのGetty Imagesは、画像生成AIが作成した画像を同プラットフォームに登録することを禁止すると発表した。現行の著作権法では明確な取り決めがないことが理由だという。

AIアートがコンテストで優勝
米コロラド州で開催されたアートコンテスト「Colorado State Fair」で、Midjourneyを使って描かれたジェイソン・マイケル・アレンの作品《Théâtre D’opéra Spatial》がデジタルアート部門で1位を獲得。

Midjourneyで作成された《Théâtre D'opéra Spatial(スペースオペラ劇場)》(2022)

2022年10月
Twitterで「#AI絵師」がトレンド入り

イラストに特化した画像生成AI「NovelAI」のリリースがきっかけとなり、日本のX(旧Twitter)で「#AI絵師」がトレンド入りした。この造語はSNS流行語大賞2022にノミネートされた。

2022年11月
MoMAがAI作品を展示

ニューヨーク近代美術館(MoMA)が、レフィーク・アナドールの《Unsupervised》を展示。同館のコレクションを学習したAIが生成する大型インスタレーション作品となり話題を呼ぶ。

2022年12月
2023年のトレンドカラー、AIを使って作られる

パントン社が、AIを使って作られた「ビバ・マゼンタ」を2023年のトレンドカラーとして発表。

2023年:加速度を増すAI技術、著作権はどこにある? 増える法廷争い

2023年1月
顔認識技術でラファエロ作品が判明

イギリスの2つの大学の研究者たちが顔認識技術を用いた解析を行い、作者不明のままだった聖母子像《de Brécy Tondo》がラファエロの作品である可能性が高いと判定した。

アーティストたちが画像生成AI会社に集団訴訟
カーラ・オルティス、ケリー・マッカーナン、サラ・アンダーセンの3人が、画像生成AIが著作権を侵害したとしてStability AI、Midjourney、DeviantArtに対して訴訟を起こした。

2023年2月
Gettyが画像生成AI企業を起訴

Getty Imagesが、画像生成AI「Stable Diffusion」を訓練するために同社の画像1200万点以上を無断で使用したとして、開発元のStability AIを起訴した。

美術批評家のジェリー・サルツがレフィーク・アナドールの作品をスクリーンセーバーだと批判
サルツは『Vulture』への寄稿で、MoMAで展示された《Unsupervised》に対して「心を掻き立てないし、謎も引き起こさない」と酷評。本作を含めたAIアートの問題点を、その元になった素材以上のものになっていないことだと評した。

2023年3月
世界初の「AIアートギャラリー」がオープン

AIアート専門ギャラリー「Dead End」がアムステルダムにオープンした。生成AIを使って11人のAIアーティストを育て、オーナーとAIが協働しながら制作するスタイル。

2023年4月
国際写真アワードでAI生成写真が優勝

「Sony World Photography Awards 2023」にて最優秀賞を受賞したドイツ人アーティストのボリス・エルダグセンが、受賞後にAIを用いて作品づくりを行ったことを明かし、賞を辞退した。

ソニーが主催するSony World Photography Awardsにおいてグランプリを受賞。その後辞退された

ベネット・ミラーの生成AI作品の展覧会が開催
『フォックスキャッチャー』『マネーボール』『カポーティ』などで知られる映画監督のベネット・ミラーが画像生成AIで制作した作品の展覧会が、ニューヨークのガゴシアンで開催された。

ガゴシアンで行われたベネット・ミラーの個展展示風景 出典:ガゴシアンウェブサイト(https://gagosian.com/exhibitions/2023/bennett-miller/)

2023年5月
Photoshopに生成AIが搭載

Photoshopのアップデートが発表され、生成AI「Firefly」を用いた「ジェネレーティブ塗りつぶし」機能が搭載。テキストプロンプトによって、画像を編集することが可能になった。

武蔵野美術大学「生成AIについての学長からのメッセージ」を公開
樺山祐和学長はメッセージのなかで、法整備の現状やリスクをよく理解したうえで、「研究・制作対象として、生成AIを扱うことは積極的に行うべき」と述べた。

2023年8月
米判決:生成AIのアート作品は著作権保護の対象外

米ワシントンD.C.の連邦判事は、AIによって生成されたアート作品に対し、「人間の関与なしに創作された作品に著作権を認めることを拒否する」との判決を下した。

2023年9月
Gettyが生成AIツールを発表

Getty Imagesは、同社が保有する画像を利用することで、著作権問題をクリアするかたちで商用利用できる生成AIツール「Generative AI by Getty Images」を発表した。

画像生成AI「DALL-E 3」が公開
Open AIの画像生成AIサービス「DALL-E」の新バージョンが公開。より複雑なプロンプトを理解できるようになったほか、同じくOpen AIが開発するChatGPTと統合され、ChatGPTに話しかけるだけで画像が生成可能となった。

ChatGPTがキュレーターを務める展覧会が開催
ノースカロライナ州のナシャー美術館で、ChatGPTがキュレーターを務める展覧会「Act as if you are a curator: an AI-generated exhibition」が開催された。

メキシコでAIアート賞が新設
メキシコのアートセンター「SFER IK」が、生物多様性や種族間の協力、自然との共生をテーマとしたAIアートに贈られる「SFER IKアワード」を発表した。

2023年10月
AIの学習を妨害する新ツール「Nightshade」が公開

シカゴ大学の研究チームが、写真やイラストが生成AIの学習に無断で使用されることを妨害できるツール「Nightshade」を発表した。

Adobeが「AIシンボル」を発表
Adobeは、クリエイターがいつ、どこでAIを使用しているかを透明性をもって示すためのツールを発表した。

オーストラリアで世界初のAIアート賞が開催
バララット国際フォト・ビエンナーレで、第1回「Prompted Peculiar International AI」が開催。Midjourneyを用いて作られたAnnika Nordenskiöld(アニカ・ノンデンショルド)の白黒写真《Twin Sisters in Love(恋する双子の姉妹)》が受賞。

アニカ・ノンデンショルド Twin Sisters in Love 2023

2023年11月
Paris PhotoにAI特設展が登場

2023年のParis Photoで、ヨーロッパのアートフェアでは初となるAI生成写真に特化した特設展が設置された。

AIによって生まれたビートルズの新曲が発表
ビートルズのオリジナルメンバー4人が揃った最後の新曲「Now and Then」がリリース。AI技術によって90年代に録音されたサウンドを蘇らせることで、27年ぶりの新曲が制作された。

2023年12月
AIが生成した画像が著作権法によって保護される芸術作品であると判決(中国・北京)

ある知的財産権紛争において北京の裁判所が下した判決。今後のAIの著作権紛争に広範囲な影響を与え、最終的には中国のビッグテック企業に利益をもたらす可能性があるとされる。

AI画像生成「特定作品の出力目的は著作権侵害の恐れ」と文化庁
文化庁が「AIと著作権に関する考え方について(素案)」を発表。著作権者に許諾を得ることなくAIが絵や文章を機械学習できるとした著作権法について、特定作品は対象外となるとなるとの見方を示した。

『ニューヨーク・タイムズ』誌がOpen AIとマイクロソフトを記事無断使用で提訴
アメリカ『ニューヨーク・タイムズ』誌は、同誌の記事数百万本がChatGPTの学習のために無断で使用されていると指摘。サービスを提供するOpen AIと、同社と連携し、100億ドル以上を投資するマクロソフトを提訴した。


Art Beat News

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