1月28日、フランス、パリのルーヴル美術館で環境活動家らがレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》(1503〜19頃)にカボチャスープを投げつけるという事件が起きた。活動家2名は警察に逮捕。絵画はガラスで保護されており、損傷はなかったという。
活動家は「健康で持続可能な食べ物」の権利を訴えた。《モナ・リザ》にスープをかけたあと、Tシャツに書かれた「Riposte Alimentaire」のスローガンを見せるポーズをとり、「どちらが大事か? 芸術か、それとも健康で持続可能な食べ物をとる権利か」とフランス語で発言。また「あなたたちの農業制度は病んでいる。農家は、農作業をしながら死んでいる」とも主張した。
この抗議行動について、「Riposte Alimentaire(食べ物の反撃)」と名乗るグループが自分たちによるものだとSNSで主張している。活動の目的は「食べ物を社会保障制度全般に取り込む」ことだという。
美術館は《モナ・リザ》がある「国家の間」から、来館者を一度退出させたのち、清掃作業を済ませ、約1時間後には観覧を再開したという。
本件について、フランスのラシダ・ダティ文化相はSNSで「私たちの文化遺産と同様、モナリザは未来の世代のもの。攻撃の標的になることはどのような大義があっても正当化されない」とメッセージを発信した。
近年環境活動家による抗議の手段として芸術作品への攻撃が相次いでいるが、今回の背景にはフランス国内で相次ぐ農家による抗議活動があるようだ。燃料の高騰や増税、安い農作物の輸入など様々な理由から、農家が生計を立てられなくなっていると訴え、公共空間での農業廃棄物の大量投棄や、トラクターで高速道路を占拠するなどといった抗議活動が続いている。
《モナ・リザ》は2022年5月にもルーヴル美術館でケーキを投げつけられる事件が起きていた。
1956年に石を投げ付けられて一部が損傷したのを受け、ガラスで保護されるようになった。2005年以降は防弾ガラスで覆われている。
日本では1974年、東京国立博物館で《モナ・リザ》が展示された際、米津知子が保護ガラスに向けて赤いスプレーを噴射した。車いすの障害者やベビーカーの入場が事実上禁止されたことへの抗議だった。(本事件については荒井裕樹『凜として灯る』[現代書館]に詳しい)
Tokyo Art Beatでは、相次ぐ芸術作品への攻撃について、増田麻耶による論考を公開している。