金沢21世紀美術館の24年度事業詳細が先日公開され、今年度のテーマが「アートと新しいエコロジー」になると発表された。開館20周年を迎える今年は、新しいエコロジーにおける共生可能性を探る特別企画展や、大規模なコレクション展が開催される。
今年1月に起こった能登半島地震の被害で長期休館していた同館。その再開を飾るのはコレクションに焦点を当てた「ラインズー意識を流れに合わせる」展(6月22日~10月14日)だ。
この展覧会では、芸術作品における基礎的な要素である「線」に着目。「線―ライン」を動的なジェスチャーや異なる空間や概念をつなぐ存在としてとらえ、多面的で発展的な世界のつながりを作品を通じて示す展覧会になる。展覧会では、2023年4月に新たにコレクションとして加わった、マーク・マンダース《4つの黄色い縦のコンポジション》や、横山奈美作品のほか、エル・アナツイ、ティファニー・チュン、サム・フォールズ、大巻伸嗣、ジュディ・ワトソンらの作品が展示される。
11月からは開館20周年を記念して、特別企画展「すべてのものとダンスを踊ってー共感のエコロジー」(11月2日~2025年 3月16日)が開催される。
自然環境や社会、情報環境の変化にともない、私たちを取り巻くエコロジーはますます複雑化している。本展では、社会や精神までを含みうる、総合的なエコロジー理論の行く末を、アーティストの鋭敏な感性と観察を通じて作品として展示。世界各地から参加するアーティストたちが、専門的な内容を視覚化、可感化することで、感覚を通した学びを提供する場となる予定だ。
同館の長谷川祐子館長は、この企画展を過去2年間の「歴史との対話」「現代のテクノロジーとの関係」というテーマの総集編と位置づけており、ここ数年の同館のテーマを総観するような展覧会となりそうだ。
2024年、金沢21世紀美術館におけるもうひとつの見どころは、大規模に展開されるコレクション展だ。展示は、1期目が6月22日~9月29日、2期目が10月12日~2025年 1月19日、3期目が2025年 2月1日~5月11日と会期を3期に分けて開催される。
開館当時200点から始まり、現在は4200点に達した同館のコレクション。その多くが年間を通して公開されるということで、美術館のアイデンティティと歴史を感じられる作品を一挙に目にできる機会となる。
これまで紹介してきた展覧会に加え、今年度は様々なイベントも開催される。とくに注目したいのは、アート、デザインと発酵食、まち歩きが結びついた新たなイベント「アートで巡る発酵ツーリズム (仮)」(9月21日~12月8日 予定)だ )。
キュレーターに小倉ヒラク(発酵デザイナー)、ゲストキュレーターにドミニク・チェンを迎え、金沢の醸造家とアーティストが手を組んで発酵をテーマに作品を制作。ひがし茶屋街、大野港、野町、石引の各エリアと金沢の醸造所に設置されたインスタレーションをめぐる旅となる予定だ。
開館20周年記念ということもあって、見逃せない展覧会やイベントが数多く開催される2024年。震災から少しずつ復興する金沢の街を見守りつつ、何度も足を運びたい。