佐々木健 《祖母のテーブルクロス(ロサ・ユゴニス)》 2024年 | Photo by Kei Okano

「洋画と手芸」

nca | nichido contemporary art
5月10日終了

アーティスト

三岸節子、佐々木健、谷澤紗和子、ホウ・イーティン、鴨居羊子、宮田明日鹿、碓井ゆい
nca | nichido contemporary art は能勢陽子氏キュレーションによるグループ展、「洋画と手芸」を開催いたします。

「洋画」と「手芸」―両者はまるで正反対のようにみえる。近代以降、観ることを目的とした芸術作品としての「絵画」や「彫刻」は男性が手がけるもの、家庭内で行われる編物・刺繍・裁縫などの「手芸」は女性が行う趣味的なものとされていた。昭和初期には、女性が画家、殊に洋画家を志すには、家庭と社会双方からの強い抵抗があった。日本画は子女の嗜みや教養と受け取られたが、「洋画」は男子一生の業とする社会通年があったのだ。対して「手芸」は、社会的、経済的価値の低いものとして女性に紐づけられ、工芸よりもさらに下位に置かれた。時が過ぎ、多様な素材や領域を横断する現在の芸術表現をみてみると、刺繍や編み物、アップリケ、切り紙などの「手芸」的要素はそこかしこに見出され、家庭内の仕事や消費社会における価値観を見事に逆照射している。さらに、ともに集い語らいながら編んだり縫ったりする行為は、地域のコミュニティ形成やケアとしても機能している。翻って「洋画」に目を向けてみると、日本近代美術の成立過程そのものの言葉とともにすっかり色褪せて、以前の権威を失ったようにみえる。いま、洋画の老舗画廊の現代美術部門であるnca|nichido contemporary artで展覧会をするにあたり、この両極端にあるかにみえる「洋画」と「手芸」を出会わせてみたい。

1928年に創業した洋画の老舗画廊である日動画廊は、岡田三郎助や梅原龍三郎、安井曾太郎などの洋画家と、これら男性画家に比べれば数は少ないものの、三岸節子や桂ゆき、桜井浜江などの女性画家たちを紹介してきた。三岸節子(1905-1999年)は、当時の例に洩れず父から日本画をするよう嗜められたが、洋画家への道を突き進んだ。三岸が戦後、1945年9月にいち早く活動を再開したのも、この日動画廊であった。また、日動画廊を代表する画家である鴨居玲(1928―1985年)の姉、鴨居羊子(1925-1991年)は、質素で地味な白い下着しかなかった1950年代に、ゆったりとした奇抜な下着の着用による女性精神の解放を謳った。現代の画家である佐々木健は、権威の象徴としての洋画の主題にはなりそうもない家庭内の手芸品や掃除道具を、油絵具で丹念に、微細に描き出す。谷澤紗和子は、切り紙の技法を用いて、岡田三郎助(1890-1954年)に師事した洋画家・有馬さとえ(1983―1978年)をモチーフに、当時形成された女性像やその背後に隠れた女性洋画家の抑圧や秘めた強さを掬い取る。碓井ゆいは、鴨居羊子の絵とともに、アップリケやパッチワークを施した下着やベッドカバーを展示して、社会から見えなくなった家内労働や記憶を可視化する。台湾出身のホウ・イーティンは、日本統治時代の学校における良妻賢母教育としての裁縫や園芸を、記録写真に施した刺繍により浮かび上がらせる。宮田明日鹿は、手芸を介して人々がともに語らい互いの人生を編みあげる、寄り合いの場としての「手芸部」を各地で展開している。かつての女性芸術家たちの奮闘と「手芸的」要素を取り込んだ現代作家たちの作品は、マイナーとされてきたがゆえの自由で奔放、ユーモラスな作品で、特権的な美術制度に反旗を翻すだろう。

スケジュール

開催中

2025年3月21日(金)〜2025年5月10日(土)あと24日

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日

オープニングパーティー 2025年3月21日(金) 17:00 から 19:00 まで

入場料無料
会場nca | nichido contemporary art
http://www.nca-g.com
住所〒106-0032 東京都港区六本木7-21-24 102
アクセス東京メトロ日比谷線・都営大江戸線六本木駅7番出口より徒歩5分、東京メトロ千代田線乃木坂駅5番出口より徒歩7分
電話番号03-6384-5310
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