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Sara Anstis, Bath, 2024. Pastel on paper, Unframed : 39.5 x 32 cm | 15 1/2 x 12 5/8 inches. Photo by Stephen James. Courtesy of the artist, Kasmin and Perrotin.

サラ・アンスティス 「Bath」

ペロタンサロン東京
終了しました

アーティスト

サラ・アンスティス
ペロタン東京はこの度、ロンドンを拠点とするアーティスト、サラ・アンスティス(1991年ストックホルム生まれ)による個展「Bath」を開催いたします。油彩画とドローイング構成される本展は、アンスティスにとって当ギャラリーで初めての個展となります。

サラ・アンスティスが創り出す異世界のような情景には、多くの場合ヌードの人物たちが、動物たちとともに親密に交わり合う姿が描かれます。ここに示される夢のような世界観は、美術史の文脈に照らして見ることで部分的に読み解くことが可能です。アンスティスの想像的な世界にはシュルレアリスム運動の影響が見られますが、彼女の関心はさらに遠い過去にも広がり、その広大な源流から視覚表現や主題の着想を得ています。中世や初期ルネサンスを思わせる具象的な表現は、20世紀半ばの色彩理論や幾何学的抽象を想起させる象徴主義的な要素や色調と融合しています。

アンスティスの作品制作において重要な位置を占めているのが、紙に描いた作品です。目の粗い水彩紙の持つ質感と、その上に重なるもやがかった柔らかなパステルの層の両方によって、際立った物質感を生み出してきました。こうして丹念に重ねられた層から得られるのは、紙面から震えるように立ち現れる、色鮮やかな二次元のイメージです。そして本展では、アンスティスが木製パネルに描いた作品も初めて発表します。ここでも物質性が主要な役目を担っており、顔料の層を通してパネルの木目が浮かび上がることで、支持体と絵具が同等の存在感を持って溶け合う効果をもたらしています。

《Running, Red》では、ヌードの女性が一人、鑑賞者をじっと見つめながら画面を横切っていきます。その背後には、遠くで火の燃える地獄のような光景が広がり、そこでは脱衣したさまざまな状態の人々が同じ方向へ向かっています。この作品からは、ピーテル・ブリューゲル《悪女フリート》(ヒエロニムス・ボスから大きな影響を受けた世界観のなかで、画面中央の女戦士、悪女フリートが女たちを率いて地獄から略奪する様子が描かれた記念碑的作品)が想起されますが、アンスティスの用いる人物の視線を固定する手法には、明らかに現代的な感覚が息づいています。視線は、彼女の創り出した舞台の「第四の壁」を打ち破り、時間を凍結するかのようです。神々しい閃光の瞬きに捕らえられた私たちは、もはや出来事の傍観者ではいられず、目の前の場面に向き合うことを余儀なくされます。ヌードと裸体の境界線は決して明確でなく、アンスティスは私たちに作品を注意深く眼差し、自分なりの答えを見出すよう促すのです。

アンスティスが描く場面の多くは謎めいた寓話として立ち現れ、鑑賞者はその作品に見入りながら、描かれた人物たちと彼女たちを取り巻く環境、そして自分自身との関係性や価値を探ろうとします。《Dinner Table》では、陰鬱な表情をした着衣の人物が画面手前を占め、テーブルに置かれた空の皿の横に立っています。その後ろには、片腕を伸ばした裸婦の姿。物語は不明瞭ながら、暗示と問いに満ちています。展覧会全体を通して明らかになるのは、見せることと隠すことの絶え間ない往還、というテーマです。《Laundry》に描かれた人物の前には、色とりどりの布が幾重にも重ねて配置されており、そこから伸び出た首は、衣服を脱いでいることを示唆します。布は彼女の身体を隠す役割を果たしながら、またしても私たちにこの場面の物語を想像するよう誘いかけます。《Bath》でも同様に、浴槽が3者の身体を隠し、彼女たちはその守られた空間の中から私たちを満足げに見つめています。そして画家自身も、浴槽の上に掛けられた鏡に映った姿として存在します。彼女の目は製図台に隠されていますが、場面全体の描写からその視線を感じ取ることができます。

展覧会のタイトル「Bath」は、美術史の長い系譜からさまざまなイメージを想起させますが、アンスティスは「浴室」をローマ的な意味合いで捉えることで、日常的な浴槽から硫黄の香り漂う冥界へとイメージを展開していきます。日常から地獄へ、そして再び日常へと私たちを導くこのつながりは、展覧会全体を通じて実感できるものであり、同時に、すべてを包み込み、飲み込み、惑わすヴィジョンを持つ作家の存在そのものでもあるのです。

スケジュール

2025年3月5日(水)〜2025年4月5日(土)

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日

オープニングパーティー 2025年3月5日(水) 17:00 から 19:00 まで

入場料無料
展覧会URLhttps://www.perrotin.com/exhibitions/sara_anstis-bath/12489
会場ペロタンサロン東京
https://www.perrotin.com/
住所〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
アクセス都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅1a・1b出口より徒歩1分
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