年末年始の冬休み期間に開催されている注目展覧会をピックアップ。大阪など西日本の展覧会を紹介します。気になる展覧会はウェブ版でのログインやTABアプリでブックマークがおすすめ。アプリでは、開幕と閉幕間近をプッシュ通知でお知らせします。
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ラテックス製のボディースーツで自身の身体を拡張させ、家畜などのキャラクターに扮したパフォーマンスを行ってきたサエボーグ。本展は、代表作の《Slaughterhouse》、《Pigpen》、《Pootopia》という農場が舞台の中心となる作品で構成され、「Enchanted Animals(魔法にかかった動物たち)」による新たな世界を立ち上げる。観客は、家畜の耳や尻尾を付けて展覧会に入場し、会場内で家畜となって過ごす。鑑賞者自身が魔法にかけられたように家畜に変身することで、家畜の生に触れたり、情を見出したり、あるいは解放された自分自身と出会えるような舞台的な空間を作り出すという。
会場:黒部市美術館
会期:11月16日〜2025年1月13日
工芸やデザインを特徴づける「反復」と「偶然」というふたつの性質に注目し、国立工芸館の所蔵品を紹介する展覧会。同じパターンの繰り返しは空間的な広がりや心地よいリズムを感じさせるいっぽう、偶然性は人為を超えた作品の力によって繊細さや神聖さ、力強さなどを感じさせる。本展では、「反復」と「偶然」がそれぞれもたらす印象や効果に注目するほか、工芸とデザインの共通点や差異などにも目を向け、ふたつの言葉を手がかりに、工芸とデザインの本質をわかりやすく紹介する。
会場:国立工芸館
会期:12月17日〜2025年2月24日
開館20周年を迎える2024年、「新しいエコロジー」を年間テーマに掲げる金沢21世紀美術館。このテーマに呼応して行われる本展では、社会や精神までを含みうる、総合的なエコロジー理論の行く末を、アーティストの鋭敏な感性と観察を通じて作品として展示するとともに、研究者たちと協働し、感覚を通した学び(Sensory Learning)として鑑賞者に伝えることを目指す。会場には、先住民の作家を含む、アフリカ、南アメリカ、アジア、欧米の芸術家、クリエイター59組の作品が集う。フォトレポート、同展のキュレーションを手がけた同館館長・長谷川祐子のインタビューを公開中。
会場:金沢21世紀美術館
会期:11月2日〜2025年3月16日
京都・嵐山の福田美術館の開館5周年を記念して特別開催される本展では、世界初公開となる《果蔬図巻(かそずかん)》を含む、同館が所蔵する伊藤若冲の作品約30点を一挙公開する。《果蔬図巻》は、若冲が76歳のときに描かれた全長3メートル余りの大作。若冲ならではの美しい色彩を用いて様々な野菜や果物を描いた巻物だ。また会場では、若冲の作品に加えて、友人たちの作品もあわせて展示することで、未だ謎が多い若冲の人生を垣間見るような構成になっている。展覧会レビューを公開中。
会場:福田美術館
会期:10月12日〜2025年1月19日
スイスを代表するグラフィックデザイナー、タイポグラファーであるヨゼフ・ミューラー=ブロックマン(1914〜1996)と、そのパートナーであり日本人芸術家の吉川静子(1934〜2019)の活動と作品をテーマにした展覧会。1960年に東京で開催された世界デザイン会議で出会ったふたりは、チューリッヒを拠点に芸術活動、教育活動に従事した。ミューラー=ブロックマンが亡くなった後も、吉川はチューリッヒで画家として晩年まで制作を続けた。吉川の没後初となるふたり展であり、スイスと日本の国交樹立160周年を記念した回顧展となる本展では、吉川の芸術世界とミューラー=ブロックマンの卓越した構成的デザイン、そしてふたりの活動の軌跡を紹介する。
会場:大阪中之島美術館
会期:12月21日〜2025年3月2日
江戸末期の浮世絵師、歌川国芳。それまでの浮世絵の歴史を塗り替える斬新な作品を世に送り出し、その奇抜なアイデアや現代に通じるデザインセンスとユーモアは、時代や国に超えて多くの人々を魅了している。本展では、「通俗水滸伝豪傑百八人之一個(壱人)」連作/シリーズや、最晩年の6枚続きの大作《四条縄手の戦い》(前期のみ)など、国芳の代名詞である武者絵の数々が一堂に並ぶほか、幅広い画題の浮世絵版画、貴重な肉筆画など、約400点を展示する。
会場:大阪中之島美術館
会期:12月21日〜2025年2月24日
かつては完成作のための習作や下絵、あるいはデッサンとしての役割を担い、近代には、抽象絵画などを通して線表現そのものに独立した価値が見出され、いまなおその表現領域を拡大し続ける「線」。本展では、美術館のコレクションのなかから版画・素描を中心に、絵画、彫刻、写真を加えた約150点を選び、現代美術における線表現の多様性を紹介する。展覧会レビューを公開中。
会場:国立国際美術館
会期:11月2日〜2025年1月26日
映像やドローイング、壁画、オブジェ、インスタレーションなど多岐にわたる作品を手がけるドイツ人アーティストの個展。作家は美大に進学する前に舞台美術を学んでおり、演劇の世界に強い愛着を持ち続けている。本展では、フォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵作品から2つのビデオインスタレーションを日本公開。18世紀後半のドイツで上演されていたオペラの形式を参照した《Singspiel》(2009)、活人画やギリシャ悲劇のコロス(合唱隊)の要素を取り入れた《Chorspiel》(2010)を通して、ドイツを代表するアーティストの多面的な作品世界を紹介する。レポートを公開中。
会場:エスパス ルイ・ヴィトン大阪
会期:11月27日〜2025年5月11日
2012年に「ラッセン展」や「心霊写真展」の企画でデビューした原田裕規。近年は、広島や山口からハワイへ渡った移民について調査し、日系アメリカ人の混成文化を題材にした映像作品《シャドーイング》を発表している。本展タイトルと同名の作品《ホーム・ポート》は、日系人も多く移り住んだ町であり、2023年夏に大火に襲われたマウイ島ラハイナを描いたラッセンの作品がもとになっており、ラハイナへの滞在歴もある原田は、「母港」を意味する本作の題名を展覧会タイトルとして採用したのだという。会場では、原田が現時点の集大成と位置付ける新展開の平面作品に加え、これまでに制作された代表的な映像作品やインスタレーション、パフォーマンス作品、10代の大半を過ごした「広島時代」の初期絵画などを紹介する。
会場:広島市現代美術館
会期:11月30日〜2025年2月9日
「ホーム」という言葉には、人々が過ごす物質的な家、また家に集う集合体である家族、そして故郷や祖国などという意味がある。本展は、歴史、記憶、アイデンティティ、私たちの居場所、役割などをキーワードに表現された国内外の現代美術家の作品群から、「ホーム」の多様な意味を再考する。それらを通して、私たちにとっての「ホーム」、「家」そして「家族」とは何かということや、所属する地域や社会の変容、普遍性などを浮かび上がらせることを試みる。出展作家は、マリア・ファーラ、潘逸舟、石原海、鎌田友介、リディア・ウラメン、竹村京、アンドロ・ウェクア。
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
会期:10月12日〜2025年1月13日
福岡アジア美術館は、アジアの近現代の美術作品を系統的に収集し展示する世界で唯一の美術館。同館のコレクション展である本展では、韓国初となる実験映画を制作したキム・グリム、欧米の美術動向から独自の抽象絵画を発展させたキム・ファンギ、民主化運動のなかで奔走したホン・ソンダムといった作家の作品を通して、韓国現代史を振り返りながら、激動の時代とともに歩んだ韓国美術のリアリティを探る。
会場:福岡アジア美術館
会期:12月19日〜2025年4月8日
手塚治虫による医療マンガの金字塔『ブラック・ジャック』。同作の過去最大規模の展覧会である本展では、500点以上の原稿に加え、連載当時の『週刊少年チャンピオン』や1970年代に発行された単行本、200以上のエピソードの直筆原稿が展示される。また、『ブラック・ジャック』が描かれた時代に影響を受けた作品や、制作当時の関係資料、『ブラック・ジャック』の誕生秘話が解き明かされる証言映像なども多数紹介される。『ブラック・ジャック』のすべてを余すところなく体感できる展覧会となる。
会場:長崎美術館
会期:10月26日〜2025年1月5日
ダリの生誕120周年、シュルレアリスム宣言100年の年に開催される本展は、世界屈指のダリ・コレクションを誇る諸橋近代美術館の所蔵品を中心に、ダリの生涯を概観するもの。ダリの油彩、素描、 版画、彫刻のほか、シュルレアリスムの作家の作品群など、約70件の作品と関連資料を通して、「シュルレアリスト・ダリ」とその背景にある「人間・ダリ」の複雑で繊細な内面を探る。また、ダリの渡米以降の活動にも注目する。
会場:大分県立美術館
会期:11月22日〜2025年1月19日
写真家・映画監督の蜷川実花とクリエイティブチーム・EiMの協働による展覧会。蜷川とEiMは本展の開催にあたって沖縄県の様々な場所を訪れ、自身初となる水中での撮影を含め、地域の自然や風景を撮影した。なかでも夜咲いて朝には散ってしまう幻想的な植物「サガリバナ」との出会いは、展覧会タイトル「光の中で影と踊る」につながる重要なもので、キーヴィジュアルにも採用されている。本展の会場は沖縄の自然がもたらす「光と影」のコントラストを美術館の各所で体感できる構成となっており、屋外空間では布に印刷した蜷川作品が展示される。
会場:南城美術館
会期:11月27日~2025年5月30日