2022年に開館し、19世紀後半から現代までの美術とデザインを中心に、6000点を超えるコレクションを所蔵している大阪中之島美術館。日本と海外の代表的な美術作品を核としながら、地元大阪で繰り広げられた豊かな芸術活動にも目を向けている。このたび、同館で2025年度に開催される展覧会のラインナップが発表された。4階、5階の展示室でそれぞれ行われる7つの展覧会を紹介する。
家庭用ゲーム機の登場から約半世紀が経ち、私たちの生活に広く浸透しているビデオゲーム。1983年の創業から世界的ゲームメーカーに成長した現在まで本社を大阪に置いているカプコンは、数多くのタイトルで世界中の人々を魅了してきた。本展では、開発者たちの「手」による企画書や原画、ポスターやパッケージを含むグラフィックワーク、体験型コンテンツ、最新技術などを通して、ゲームが生まれるまでのプロセスとそこに関わるクリエイターの想像力や実現力を紹介。日本のゲーム文化をとらえなおす機会の創出を目指す。
女性芸術家がまだ少ない時代に若くして頭角をあらわし、明治から昭和にかけて60年におよぶ創作を通して、人物画の第一人者として独自の境地を切り拓いた上村松園(1875〜1949)。浮世絵などの古画の研究や、伝統芸能、古典文学などの豊かな知識をもとに描かれた清澄な女性像は、現在も見る者を惹きつけている。上村松園の生誕150年を記念して行われる本展では、多数の作品群を通してその画業を紹介。女性として初めて文化勲章を受章した松園芸術の真価を、あらためて探る機会となる。
日本に眠る、まだ知られていない作家や作品に光を当てる展覧会。本展では2000年に「若冲ブーム」が起こるまでは伊藤若冲(1716〜1800)も「知られざる鉱脈」であったとし、そのような縄文から近現代までの「鉱脈」を掘り起こし、それらが今後の日本美術史に定着していくことを目標としている。
大阪市出身で、近代日本を代表する洋画家のひとり、小出楢重(1887〜1931)の25年ぶりの回顧展。「裸婦の楢重」と呼ばれるように裸婦像の名手として知られる楢重は、43歳で急逝するまで油彩画を追求し続けた。今回の展覧会では、初期から晩年までの画業を各時代の代表作とともに辿り、その油彩画の魅力に迫るほか、素描、ガラス絵、装幀、挿絵、随筆などで発揮された多彩な才能についても紹介する。
2025年は、1925年にパリで開催された現代産業装飾芸術国際博覧会が100周年を迎える年。装飾芸術に焦点を当てたこの博覧会は「アール・デコ博」と呼ばれ、以降アメリカをはじめとする諸外国に国際的な影響をおよぼした。本展では、アール・デコと呼ばれる様式のなかでも、とくに女性と関わりの深いデザイン作品にフォーカスし、当時のグラフィック、ファッション、ジュエリー、香水瓶、乗用車などを紹介。100年前の「理想的な女性」像を振り返り、そのデザイン諸相を再発見する展覧会となる。
1924年にアンドレ・ブルトンが定義づけた動向であるシュルレアリスム(超現実主義)。当初は文学における傾向として起こり、やがてオブジェや絵画、写真・映像といった視覚芸術をはじめ、広告やファッション、インテリアなど幅広い展開を見せた。本展では、「表現の媒体」をキーワードにシュルレアリスムを解体し、シュルレアリスム像の再構築を目指す。
ニューヨークを拠点に活動するアーティスト、サラ・モリスによる日本の美術館では初となる回顧展。モリスは、大都市の風景を平面に変換した抽象絵画や、それを建築的に展開させたパブリックアート、都市の生態を切り取った映像作品など、多岐にわたる創作活動を続けている。大阪中之島美術館は、モリスが2018年に大阪を舞台に制作した映像作品《サクラ》、その撮影にインスパイアされた絵画作品《サウンドグラフ》シリーズなどを収蔵している。本展では、これらの近作に加えて、代表作である都市名を冠した幾何学的な絵画や初期作品、これまでの映像作品を一堂に紹介する。