Whence? How? Whereto? #4, 2025, acrylic, wood, felt, and aluminum frame, 62.0 x 143.0 x 3.8 cm

田村琢郎 「Uncertain Romance」

MAKI(天王洲)
5月24日終了

アーティスト

田村琢郎
このたび MAKI Gallery は、田村琢郎の弊社で2回目の個展「Uncertain Romance」を天王洲ギャラリーにて開催いたします。本展において田村は、「人生ゲーム」のモチーフを大胆に変容させることで、人生の複雑さを象徴する複層的なメタファーへと昇華させた新作の数々を発表します。

会場を見渡すと、「人生ゲーム」の見慣れた駒の大きさや数を不条理なほどに拡張させた作品が真っ先に目を引きます。ギャラリー空間には、球体を載せた色とりどりの円柱が点在しており、これはゲーム内で個々のプレイヤーを表すプラスチック製のペグを巨大化させた「Nomadic Pegs」と題された立体作品群です。大きく膨張したペグは簡単に動かしたり、置き換えたりすることができないため、各プレイヤーに提示される選択の “重み” を象徴しているともいえます。また、本来のペグは識別しやすいよう単色で彩られていますが、田村の作品はパターンやグラデーション、そして塗装を何度も重ねることで、奥行きのある表面を演出しています。作家はペグに物理的な改変を加えることで比喩的に現実に近づけており、人間はゲームの駒のように単純に分類できる存在ではなく、それぞれの個性やあり方は、関わる人々や置かれた環境によって絶えず変化するものであることを示唆します。

一方、田村の「Flagment」シリーズは、約200点のデフォルメ化された旗の彫刻で構成されており、各々が独自の色の組み合わせで彩られています。旗は「人生ゲーム」において所有権の象徴であり、プレイヤーは購入した建物に自分の色の旗を立てます。ギャラリーの白い壁に異なる角度で配置された無数の旗は、まるで宙に浮くシニフィアンのように、実態のないものの所有を主張しているかのようです。もしコレクターがこの作品を購入するとしたら、それは“所有”という抽象的な概念を購入することになるのか——田村は物の価値や実態を揺さぶる問いかけを観る者に投げかけます。

支配を象徴する旗に対し、「Whence? How? Whereto?」シリーズは、「人生ゲーム」のカラフルなマス目が絡み合うことで、始点も終点もない混沌そのものを体現しています。その迷宮のように入り組んだ構造の中には、ルーレットが埋め込まれています。本来プレイヤーに進むべき道を示すルーレットですが、止まることなく延々と回り続け、なんの指針も与えようとしません。プレイヤーに明確な目標や課題が提示される本来のゲームとは反面に、田村の作品は情報過多の現代社会における無限の選択肢と、不確定な未来を表現しています。作家は、人生の不確定性を積極的に受け入れ、自らの関心や感情、目的さえも常に変化し続けるものと捉えており、その曖昧なカオスの中にこそ美を見いだしているのです。

オスカー・ワイルドは「ロマンスの本質は不確実性である」という名言を残しました。しかし、田村の場合、この言葉を「不確実性の本質はロマンスである」と言い換えられるかもしれません。彼にとって、人生の不確定こそが自身の存在意義になり、また、創作の原動力となっているのです。田村は、身近なものを本来の役割から切り離し、ときにはまったく無用なものに変えてしまうことで、観る者の固定観念を覆し続けています。現代社会の構造や規範、通念を鋭く批判しつつ、この予測不可能な世界に潜む驚きと魅力に目を向けるよう、観る者を真摯に促す作品の数々を、ぜひ会場にてご高覧ください。

スケジュール

開催中

2025年4月12日(土)〜2025年5月24日(土)あと38日

開館情報

時間
11:3019:00
休館日
月曜日、日曜日
入場料無料
会場MAKI(天王洲)
https://www.makigallery.com/ja/
住所〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 1F
アクセスりんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩9分、東京モノレール天王洲アイル駅南口より徒歩10分、京急本線新馬場駅北口より徒歩9分、JR品川駅港南口より都営バス「天王洲橋」下車徒歩4分
電話番号03-6810-4850
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