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多和圭三 展

ヒノギャラリー
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アーティスト

多和圭三
ヒノギャラリーでは2024年11月11日(月)より、彫刻家 多和圭三による新作展を開催いたします。

今年5月、表参道にある新設のスペース B1Storage にて開催された多和の個展、新旧作品で構成されたその展覧会は《奥遠く》と名付けられました。その意を作家に尋ねると、近年は「時間の奥行き」が一層気になり、「遠くの時間を夢見るような、欲するような感覚」が湧いて止まないと、一聞つかみがたい応えが返ってきました。多和圭三は50年近く鉄を主材に制作を続ける彫刻家です。「彫刻」といいながら、その大半の作品は彫られたものでも、塑像されたものでもなく、鉄の塊を「叩き」、時に「削り」、そして「組み合わせる」という営みによってもたらされた「もの」たちです。

多和は、物質として揺るぎなく在る「鉄」との関わりにおいて、たびたび虚実の概念をそこへ投影してきました。実在するものとそうでないもの、その二項ない交ぜの中で、ものの在り方、ひいては自分自身の在り方を模索してきました。ものが「在る」という点では、垂直と水平、そして重力というファクターも、制作において切り離すことのできない課題として、常に作家を突き動かしています。

今回多和が発表する新作は、「かたちのないもの」を追いかけ「ただ鉄が在る」ことだけを求めた末に現れ出たものといいます。それはまるで、原子が互いに引かれ合うようにしてくっつき、無重力の中でくるくると回りながらいつしかかたちを成すような、そんな具合に無為に出来上がったようにも見受けられます。溶接棒をひたすら溶かし、少しずつまた接合して塊にしたというこのものは、彫塑の塑=モデリングではありますが、作家はむしろ、鉄と鉄とがくっつくことによりできたものと捉えています。

奇しくも、作家人生を鉄と共に歩み始めた1978年、多和が大学の卒業制作で発表した作品が、20キロの針金を溶かし、溶接することを繰り返してかたちにした鉄の塊でした。のちに当時を振り返り、「愛媛から東京へ出て来て、自分が目にするものすべてが細切れに見えてしまい、やりきれない思いにかられている時、地面に落ちている使い古され、捨てられた番線を見つけ、元に戻したい」と思い、「工業製品である針金を溶接という手法で塊に戻した」と語っています。現実は小説より奇なる社会で、島から出てきたその若き作家は、鉄に自身の在り方を重ね合わせたようにもうかがえます。そこから半世紀近くが経とうとしている今、多和は意識的にか無意識にか、原点に立ち返るような作業を再び選んだのです。

作家をよく知る学芸員のかたが以前、多和の「鉄の塊は、現実世界に挿入された空白ないし空洞」と言い表したことがありました。確固たる存在感を放つ鉄をもって、そのありようを空白と捉えた視座は、まさに多和が鉄の中に映し出そうと試みる虚実、在と非在のそれを言い得ているように感じます。多和が「ただ鉄が在る」ことを目指すと同時に、何もない空間を創出せしめんとするのであれば、それはものの存在(形而上的な領域も含め)をより顕在化させる行為と言えるかもしれません。

そして、空間と物質が在ることで、時間はその姿を露わにします。昨今作家が「時間の奥行き」に惹かれ、「遠くの時間を夢見」ているのは、多和の中に時空を超えた知覚の拡張、宇宙的な時間への懐かしさにも似た憧憬が生じていることを示唆します。その茫洋たる広がりの中で、この作家はこれからも悠久の時を頼りに、ものと空間を探り続けることでしょう。この塊は多和自身であり、あなたはあの塊かもしれず、また偲ぶあの人がその塊かもしれません。

ヒノギャラリーでは2年ぶりとなる多和圭三の新作展。どうぞご高覧くださいませ。

スケジュール

2024年11月11日(月)〜2024年11月30日(土)

開館情報

時間
11:0018:00
休館日
土曜日、日曜日、祝日
入場料無料
展覧会URLhttp://www.hinogallery.com/2024/3366/
会場ヒノギャラリー
http://www.hinogallery.com
住所〒104-0042 東京都中央区入船2-4-3マスダビル 1F
アクセスJR京葉線・東京メトロ日比谷線八丁堀駅A2出口より徒歩3分、東京メトロ有楽町線新富町駅7番出口より徒歩3分
電話番号03-3537-1151
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