落合由利子 「東欧1989 EASTERN EUROPE」

IG Photo Gallery
4月8日開始

アーティスト

落合由利子
IG Photo Galleryでは2025年4月8日(火)より、落合由利子展「東欧1989 EASTERN EUROPE」を開催いたします。
1989年、東京で写真家として活動していた落合由利子は、ベルリンの壁崩壊のニュースを聞きインスピレーションを得ます。ヴィム・ヴェンダースの映画『ベルリン・天使の詩』に触発されたイメージ──ベルリンの壁の前を歩く天使の姿──でした。映画の中で永遠を生きていた天使が人間になることを望んだことと、テレビから流れ出るニュース映像の傍観者でいることで感じる違和感が重なり、その土地や人々に出会って、話して、その手に触れたいという思いで、落合は現地を訪れることにしたのです。落合が撮りたかったものは、新聞やテレビで報じられる社会主義崩壊という物語の登場人物ではなく、新たな日常を生きるごく普通の人びとの存在でした。ベルリンを振り出しにチェコスロヴァキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアを3カ月間かけて旅した落合が見たもの。それが「東欧1989 EASTERN EUROPE」です。

帰国した落合は写真集にまとめることを決意し、一度は出版の了解を取り付けましたが、出版社の事情から最終的に実現には至りませんでした。落合は再び東欧へ渡航し、今度は人間の生きる根源に触れたいと願い、山間部の村に住み込み自給自足の村の生活を撮影します。そして、ルーマニアで家族を持つことになります。帰国後、日本に住むルーマニア人たちを取材した「日本国ルーマニア人物語」を新聞に連載します。その後の落合は東欧というテーマから離れ、仕事と生活、自然と暮らし、戦争の記憶などの写真作品、ルポルタージュを発表してきました。東欧の作品に新たな光があたるきっかけになったのは現代美術家、スクリプカリウ落合安奈の展覧会「わたしの旅のはじまりは、 あなたの旅のはじまり」(ANB Tokyo、2021)でした。落合はコラボレーターとして参加し、このシリーズの一部を展示しました。スクリプカリウ落合安奈は落合の娘であり、母と自身の作品を通じた対話を試み、「わたしの旅のはじまりは、 あなたの旅のはじまり」の展示構成を行っています。その展示で落合は作家の「母」として作品を展示していましたが、今回の個展では自らの作品としてあらためて発表します。落合の作品は出会った人物と正面から向き合い、その人たちとのコミュニケーションをとったうえで撮影したことを想像させる「饒舌な」写真です落合はこのシリーズに当初、「話したい」というタイトルをつけていました。当時、出会った人びとが、社会主義から民主主義へと変わりつつある中で、耳を傾ける落合に熱心に語りかけてきたからです。写真に言葉は写りませんが、被写体となった人びとの表情や仕草から、激動にあったあの頃の東欧で、発せられたかも知れない言葉が思い浮かびます。それから36年。落合が訪れた国々はそれぞれに課題を抱えながら歩んできました。ドイツのように東西が合併した国もあれば、チェコスロヴァキアのようにチェコとスロヴァキアに分かれ、国名が消滅した国もあります。

また、落合が旅した国ではありませんが、旧ソ連から独立したウクライナはロシアとの戦争状態にあります。1989年のベルリンの壁崩壊から始まったソ連、東欧の変革は、現在の世界に大きな影響を与え続けているのです。落合の写真をいま見ることは、当時の人びとを思うことであると同時に、その後の人びとの人生を想像することでもあります。ある人にとっては当時の記憶に照らし合わせ、その頃まだ生まれていなかった人にとっては歴史の出来事として、それぞれがこの時代と現在について考えるきっかけになることを願っています。展覧会と同時に落合由利子写真集『東欧1989 EASTERN EUROPE』が発売されます。なお、4月12日(土)18:00よりギャラリーでトークセッションをライブ配信いたしますので、そちらもぜひ、ご視聴ください。

スケジュール

2025年4月8日(火)〜2025年4月26日(土)

開館情報

時間
11:0018:30
休館日
日曜日、月曜日
入場料無料
展覧会URLhttps://www.igpg.jp/exhibition/ochiai.html
会場IG Photo Gallery
https://www.igpg.jp/
住所〒104-0036 東京都中央区銀座3-13-17 辰中ビル302 石田法律事務所内
アクセス東京メトロ日比谷線・都営浅草線東銀座駅A7出口より徒歩3分
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