太郎千恵藏 「Passion」

PARCEL
残り3日

アーティスト

太郎千恵藏
この度PARCELは、太郎千恵藏の1990年代と新作の絵画を中心とした展覧会を開催いたします。PARCELでは2023年の「90’s and : /or 20’s」に続き、二度目の個展になります。太郎千恵藏は、1991年にニューヨーク・ソーホーのギャラリーでデニス・オッペンハイムらと「見えない身体」展で芸術家としてデビューしました。そして翌年「ポスト・ヒューマン」展においてマイク・ケリー、キッペンバーガーらとヨーロッパの5美術館を巡回しました。奈良美智、村上隆らを有した1990年代のネオポップを代表する作家です。

今年の2月から、東京国立近代美術館にて太郎千恵藏の新収蔵された「戦争(ピンクは血の色)」1996を含む代表作3点が「所蔵作品展 MOMATコレクション(2025.2.11–6.15)」の第12室「美術家たちのダークツーリズム」という特別展示に出品されます。太郎の「戦争 (ピンクは血の色)」は同館無期限貸与の藤田嗣治「アッツ島玉砕」や「血戦ガダルカナル」などの戦争画の文脈上にあり、ポストモダンを複製技術の時代として捉えた戦争画であるといえます。

「だめだ、ぜんぜんだめだ。光がちがう! 」   ジャン=リュック・ゴダール「パッション」より

太郎は、1982年にニューヨーク大学シネマスタディーズの一年生のときに、ジャン=リュック・ゴダールの「パッション」とニューヨークの劇場で出会っています。この映画はゴダールがモデルの映画監督がレンブラントやゴヤの絵画を活人画として再現する映画制作とその町で起こる現実の労働運動が絡みあう映画です。過去の名画の映画への引用と、引用された名画と現代の現実とのモンタージュに、太郎は大きな可能性を感じました。

美術史家のストイキツァは「絵画の自意識」のなかで、「画中画」の革新性を語っています。ピーテル・アールツェンの「マルタとマリアの家のキリスト」にみられる絵画が絵画を内包する構造と似た構造を「戦争(ピンクは血の色)」や、今回展示される「経済の法則」はもっており、「戦争(ピンクは血の色)」はウィリアム・ターナーの作品「太陽の中に立つ天使」の図の上に、テレビ画面のキャプチャが乗り、ミサイルが描き足された下にはもうひとつの画面があります。「経済の法則」ではよりモンタージュは洗練され、ターナーの「国会議事堂の火災」に特撮ヒーローが描かれています。古賀春江が「海」の制作において集められた雑誌や絵葉書のイメージをモンタージュしてひとつのタブローとして成立させたように、太郎は画集やテレビ画面のキャプチャやコンピューターの画像をモンタージュして絵画を制作しました。

1996年のARTFORUM誌上で、美術評論家のジャスティン・スプリングは「戦争 (ピンクは血の色)」が発表されたNYのサンドラ・ゲーリングギャラリーでの太郎の個展をこう解説します。「テレビ、ビデオ、コンピューター、インターネットなど、パッケージ化されたテクノロジーをめぐる即時的な興奮を視覚的に表現したところに、太郎千恵藏の卓越した才能がある。今回展示された4点の大作は、ネット上のさまざまなサイトで見つけた日本のマンガのキャラクターが描かれている。キャンバスに油彩でコラージュされたこれらの作品で、太郎千恵藏は、コンピューターやテレビが生み出すイメージと無頓着で楽観的な消費文化を絵画的に表現した。ジャパニメーションとAbExの技法、そして蛍光色の絵の具を使った鮮やかなパレットという、ありそうでなかった組み合わせは、コンピューターで生成されたイメージが氾濫する世界における絵画そのものの地位に対する辛辣なコメントと見ることもできる。無表情なコメディとはまったく別の、この作品は、ロリポップ、ネオン、プラスチックの世界に身を置くおいしそうなほど人工的な色彩感覚が際立っている。ペインティングも形式主義的に印象深いが、レーザーディスクを敷き詰めた小さな遊び場を這い回る機械化された彫刻(A Robot to Fall in Love /or not,1994)は圧巻だ。」

「経済の法則」1996は、「戦争(ピンクは血の色)」と同シリーズの大作で、1996年に佐賀町食糧ビルの小山登美夫ギャラリーのこけら落としの展覧会「太郎千恵蔵展」にメインの作品として展示されました。ターナーの「国会議事堂の火災」を引用した画面上に特撮のヒーローが燃えている下半身を自ら消火している姿は当時の日本社会が直面していたバブル崩壊への対応を表しているかのようです。画廊内、同壁には以後村上隆「727」など、多くの作家が代表作を展示されてきました。

太郎の新作絵画は、日本の近代美術史における戦前の前衛芸術と漫画の関係をテーマにしています。そして特筆すべきは、靉光の「眼のある風景」とおなじように「忍術:唯物論としての」2025などの太郎が描く「一つ眼」の顔は、視線の複数性や眼差しの問題ではなく、見ている鑑賞者を「物」(イマージュの総体としての)にしてしまうような強さがあることです。この「一つ眼」のモチーフは、90年代から度々描かれています。そのほかにも戦前の前衛芸術運動MaVoの雑誌の表紙を描いた地に猫と犬をモンタージュした高見沢路直へのオマージュの絵画や、戦前の前衛画家岡本唐喜にオマージュした絵画も展示されます。

この機会にぜひ、PARCELにて太郎千恵藏の作品世界に触れて頂けると幸いです。

スケジュール

開催中

2025年2月22日(土)〜2025年3月30日(日)あと3日

開館情報

時間
14:0019:00
休館日
月曜日、火曜日、祝日

オープニングパーティー 2025年2月21日(金) 18:30 から 21:00 まで

入場料無料
展覧会URLhttps://parceltokyo.jp/exhibition/passion/
会場PARCEL
http://parceltokyo.jp/
住所〒103-0002 東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1 DDD hotel 1F
アクセスJR総武線馬喰町駅C4出口より徒歩1分、JR中央・総武線浅草橋駅東口より徒歩5分、都営浅草線浅草橋駅A2出口より徒歩5分、都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩5分、JR秋葉原駅昭和通り口より徒歩11分
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