陶で新聞やダンボール、空き缶を表現した革新的な作品で世界的に評価された美術家の三島喜美代さんが6月19日亡くなった。享年91。葬儀・告別式は近親者で執り行った。
1932年大阪市に生まれ。高校時代から具体美術協会の吉原治良に師事した画家でのちに結婚した三島茂司に絵画を学ぶ。1956~69年は独立美術協会に所属して抽象画を制作し、やがて印刷物や廃材を用いた実験的なコラージュ作品に取り組んだ。
71年から新聞紙や広告をシルクスクリーンで陶器に転写した立体作品を発表。大量消費や情報化社会を見すえ、作家自身が「情報の化石」と呼んだ斬新な作品群は、欧米を中心に海外の日本現代陶芸展などで紹介され注目を集めた。86~87年にロックフェラー財団奨学金によりニューヨークに留学。帰国後、岐阜県土岐市にアトリエを構え、地元の大阪と行き来しながら制作を行った。
80年代以降、作品は徐々に巨大化し、圧倒的な物量の陶によるインスタレーション作品を制作。2001年頃から溶融スラグ(ゴミを1400℃で焼成してできたガラス状の粉末)と廃土を素材に使い、環境に対するメッセージも作品に取り込んだ。05年に香川県直島のベネッセミュージアムに高さ5mのゴミ箱にチラシを詰め込んだ《もうひとつの再生 2005-N》が恒久設置され、14年には東京都大田区のART FACTORY城南島に本物さながらの新聞紙の束を積み上げた《NewsPaper08》などが常設展示された。
晩年も創作意欲は衰えず、国内外の展覧会やアートフェアに作品を出品し、世界的評価を高めた。森美術館で21年4月~22年1月に開催された「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」では、巨大なタンクから大量の新聞がこぼれ落ちる新作などを披露し、その成果で第63回毎日芸術賞を受賞。23年9月~11月には個展「三島喜美代―遊ぶ 見つめる 創りだす」が岐阜県現代陶芸美術館で開かれた。現在は練馬区立美術館で回顧展「三島喜美代―未来への記憶」が開催中だった(7月7日まで)。作品は、東京都現代美術館や京都国立近代美術館など国内外の主要美術館に所蔵されている。