国立新美術館が初のクラウドファンディングを実施。展覧会「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s」の開催費用の一部を募ることを目的に、クラウドファンディングサービス「READYFOR」で11月18日〜2025年1月31日まで支援を募集している。
2007年に独立行政法人国立美術館に属する5番目の施設として開館した国立新美術館。コレクションを持たないアートセンターとして活動しており、国内最大級の展示スペース(1万4000㎡)を活かした展覧会や、美術に関する情報・資料の収集・公開・提供、様々な教育プログラムなどを展開し、年間200万人超の来館者を集めている。
今回のクラウドファンディングの実施にあたっては、これまでも多くの企画展で資金獲得や予算確保を行い、コストを抑えながら取り組んでいるものの、それでも資金の調達が難航する展覧会があること、さらに昨今の海外輸送費や資材・物価の高騰などが追い打ちとなり、「当館として届けたい展示を形にするためには絶対的に資金が足りないケースも増えています」(*)と背景を説明している。
クラウドファンディングの目標金額は1000万円。同館では、2025年3月19日からスタートする「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s」において、建築家ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエの未完のプロジェクト「ロー・ハウス」を原寸大で実現し、無料で観覧できるエリアに設置することを予定しており、集まった資金はこの展示制作の費用に充てられる予定だ。
金額に応じた支援のリターンには、トートバッグやリユースタンブラー、美術館のロゴ入り筆記セット、建物外観をモチーフにしたハンドタオルなどのここでしか手に入らないオリジナルグッズのほか、企画展の招待パス、「国立新美術館学芸課長が語る『展覧会ができるまで』」、「休館日の国立新美術館で建築探検」といった特別体験プログラムも用意。5000円〜100万円まで計22コースのなかから選ぶことができる。
美術館は今回のクラウドファンディングについて、これまで個人向けのメンバーシップ制度を持たず、来館者とつながりを持つ機会が限られていた同館が、資金面だけでなく様々な人とつながり、ファンを増やすことも大きな目標のひとつだと位置付けている。「コロナ禍以降、さらに展覧会や作品の鑑賞環境改善について考えることや、多種多様な表現とその発表の場が求められる昨今において、入場者数を増やすこと、また観覧料のみに収入を頼ることが難しいのは、日本中の博物館、美術館が直面する課題です。これからの美術館経営のあり方を考えていく中で、ひとつの収入の柱として国立新美術館を応援してくださる皆さまからのご寄付の可能性を模索したい、そのために今回のプロジェクトは大きな契機になる、という思いを持っています」(※)と述べている。
また国立新美術館長の逢坂惠理子は「READY FOR」のページにメッセージを寄せ、「アーティストの豊かな創造性に触れ、来館者の皆様の五感を刺激し、多様な考えや価値観を知る機会を創出することは、私たちの使命であり、他者への理解や平和的な思考にもつながると考えています。 しかしながら、そうした展覧会を実現するための資金調達が私たちの大きな課題となっています。華やかな外見からは見えにくい現実をご理解いただき、皆様のご支援賜ることができますよう、心より願っております」と呼びかけている。
「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s」展は、20世紀に始まった住宅をめぐる革新的な試みを、衛生、素材、窓、キッチン、調度、メディア、ランドスケープという、モダン・ハウスを特徴づける7つの観点から再考する展覧会。会期は、2025年3月19日から6月30日まで。
*——国立新美術館プレスリリースより