「日本美術ブーム」ともいうべき状況が続く現代。そのブームを牽引してきたのは、「没後200年 特別展 若冲」(京都国立博物館、2000)をきっかけに「若冲ブーム」を巻き起こした江戸時代の画家、伊藤若冲(1716〜1800)だが、そんな若冲も、2000年以前には一般の人々にとっては「知られざる鉱脈」だった──。
2025年6月21日〜8月31日に大阪中之島美術館で開催される「日本美術の鉱脈展 未来の国宝を探せ!」は、これまでほとんど注目されていないもの、一部の研究者は熱心に研究しているものの、一般の方々にはほとんど知られていないものなど、「知られざる鉱脈」としての日本美術に光を当てる展覧会だ。企画監修は山下裕二(明治学院大学教授)。
開催に先立ち、一部出品作を紹介する会見が開かれた。
本展序章では、若冲、曾我蕭白、長沢芦雪ら「奇想の画家」による作品を展示。ここでの見どころのひとつが、これまでまったく類例がない、若冲と円山応挙がそれぞれ一隻ずつを手がけた二曲一双屏風だ。若冲は竹に鶏、応挙は梅に鯉を金地に水墨で描き、いずれも画家がもっとも得意とした画題。しかも、金箔の質もまったく同一だという。
続いて、現存作品はわずか10点ほどの室町水墨画もにも注目。明兆の弟子で朝鮮に渡ったことは知られるが、伝記はほとんどわからない霊彩、伝記や生没年すら謎に包まれた謎の絵師・式部輝忠など、シャープな筆致でセンスが際立つエキセントリックな造形感覚の室町時代の絵師たちの作品が展示される。
そのほか、15〜16世紀の素朴絵、幕末・明治の超絶技巧による工芸、不染鉄、牧島如鳩など、近代絵画史において他に類例のないユニークな表現で注目を集めつつある大正から昭和の画家なども紹介。
展示のフィナーレは、縄文土器と現代アート。情熱ほとばしる火焔型土器とは異なる、縄文独特のうねるようなモチーフをリズミカルかつエレガントに調和させた表現の縄文土器が登場し、一万年以上続いた縄文時代を一括りにすることで見落としがちな造形の多様性を検証するという。
鑑賞者自身の目で「未来の国宝」 を探してほしいという思いで企画された本展は、2025年話題の展覧会のひとつとなりそうだ。