8月10日、森美術館が2024年度の企画展を発表した。
2024年4月24日〜9月1日に「シアスター・ゲイツ展」、2024年9月25日〜2025年1月19日に「ルイーズ・ブルジョワ展」と、2作家の大規模個展が開催される。
シアスター・ゲイツ(1973~)はアメリカ・シカゴを拠点に活動し、国際的に高い評価を受けているアーティスト。
都市デザインと陶芸などを学び、彫刻、インスタレーション、地域再生プロジェクトなどジャンルを横断する活動で知られる。近年は「アフロ民藝」というコンセプトで、ブラック・カルチャーと日本文化の接続を試みており、国際芸術祭「あいち2022」での展示も記憶に新しい。このときゲイツは自身が20年前に陶芸を学んだ常滑市で旧丸利陶管の住宅部分を改装し、インスタレーションとして展示を行った。
今回の個展はアジア初の大規模個展であり、シカゴ・常滑・東京をつなぎ、ゲイツ芸術の全貌を明らかにするという。ブラックネス(黒人であること)の複雑さ、手仕事、政治・社会など、様々なテーマを視覚的芸術理論を用いて表現する手法に注目だ。
ルイーズ・ブルジョワ(1911~2010)はパリに生まれ、1938年にニューヨークに移住、20〜21世紀にわたり活躍したもっとも重要なアーティストのひとりだ。森美術館がある六本木ヒルズの蜘蛛の彫刻《ママン》の作者としても馴染み深いだろう。
1982年に女性作家としてニューヨーク近代美術館で初の大規模個展を行ったブルジョワは、近年再評価が高まる女性アーティストのパイオニアとして、また、20世紀を代表する彫刻家として歴史にその名を刻んでいる。
本展は、ブルジョワの日本における27年ぶりの大規模個展として、絵画、版画、素描、彫刻、インスタレーション、遺稿などを紹介し、その活動の全貌に迫る。とりわけ1938年から49年までの絵画作品の数々は、東アジアでは初めての紹介となる。重要性が最近になってようやく認識されるようになったこれらの初期作品群は、ブルジョワがその後数十年にわたって描き続けることになる造形と主題をすでに確立していることがうかがえる、大変興味深いものだという。
さらに、「蜘蛛」を題材としたシリーズを紹介することで、六本木ヒルズのパブリックアート作品《ママン》に込められた「母の愛」、「治癒の力」や「記憶」などのテーマを探求。
「アートは心の健康を保証するもの」という言葉を残したブルジョワの作品は、様々な困難に直面する現代において、鑑賞者に重要なヒントを与えるものになるだろう。
森美術館館長の片岡真実は、以下のステートメントを発表。
パンデミックや戦争は世界各地で社会の綻びを明らかにし、私たちの感情を揺さぶってきました。森美術館は、現代美術館として引き続き世界の歴史、社会、価値観の多様性を映し出しながら、なお、私たちが共に生きるために何ができるのかを問いたいと考え、2024年度には2本の大規模個展「シアスター・ゲイツ展」、「ルイーズ・ブルジョワ展」を開催します。
(略)
この2本の展覧会が、社会の綻びを繕い、人々の心を繋げる、回復や再生のためのエネルギーを私たちにもたらしてくれることを願っています。
2023年に開館20周年を迎えた森美術館。その新たな10年の始まりに期待したい。