エスパス ルイ・ヴィトン東京で、イギリス出身のアーティスト、マーク・レッキーによる個展「FIORUCCI MADE ME HARDCORE FEAT. BIG RED SOUNDSYSTEM」が開催される。会期は2月22日〜8月18日。
本展はフォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵コレクションを東京、ミュンヘン、ヴェネチア、北京、ソウル、大阪のエスパス ルイ・ヴィトンにて展示する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環。
マーク・レッキーは1964年イギリス・バーケンヘッド生まれ。ポップカルチャーとカウンターカルチャーの交差から、彫刻、映像、音、パフォーマンスなど多様な作品を発表している。2008年にはイギリスでもっとも権威ある現代美術賞「ターナー賞」を受賞。世界各地で国際展に参加、個展を開催するなど活躍するアーティストだ。
その作品はユースカルチャーやポップカルチャー、レイヴシーンからの引用にあふれ、そこにイギリス史や社会階級研究、ノスタルジーの感覚といったものがかけ合わされている。
本展ではエスパス ルイ・ヴィトン所蔵作品である《Fiorucci Made Me Hardcore(10周年リマスター版)》(1999-2003-2010)と《Felix the Cat》(2013)が展示される。
プレスプレビューでは、本展のため初来日を果たした作家が登壇。「短い期間しかいられないが、滞在を楽しんでいます」という作家は、展示について説明を行った。
《Fiorucci Made Me Hardcore(10周年リマスター版)》については、「1970〜90年代半ばにかけてのイギリス特有のダンスミュージックの歴史を扱っている」という。本作は既存の映像作品を集めて編集したファウンド・フッテージで、巨大なサウンドシステムとともに展示されている。イメージの問題に一貫して興味を持ち続けてきたという作家は本作で、過去のノスタルジーについて映像と向き合うことで考えようとしたという。
タイトルのFiorucci(フィオルッチ)はファッションブランドの名前であり、作家がティーンエイジャーだった頃には憧れの存在だった。「消費社会のなかで、あるブランドが若者にとって大きな存在感をもつようになり、その憧れが募ると信仰の対象になっていく。そういうことが面白いと思った」。「Fiorucci Made Me Hardcore」という文言は、かつてアンディ・ウォーホルが撮影したスナップ写真に写り込んでいたものから採用した。
《Felix the Cat》は上階のバルコニー状のところに挟まって登場。予想外の展示方法に、来場者はその姿を見上げて笑みをこぼしていた。
アメリカ生まれの有名キャラクター、フィリックス・ザ・キャットを模した本作。展示場所については「いつも会場でいちばん変な場所、いちばん不自然な場所を探す」と作家は言う。実際に設置してみての感想を聞くと、「この方法には展覧会の会場やキュレーターへ挑戦を突きつけるような意図もあるが、今回はエスパス ルイ・ヴィトン東京がよくやってくれた」と満足げだ。
なぜフィリックス・ザ・キャットなのだろうか。じつは1930年代、最初のテレビ放送のテストが行われた際、被写体となったのがこのフィリックス・ザ・キャットの人形だったと言う。そのときの様子をオンラインの映像で発見した作家は、通信で放送されるイメージのアバターとしてこのキャラクターをとらえ、ある種の神的存在として表すために大きなバルーンにした。本作も、イメージをめぐる作家の関心が基盤になっている。
最後に日本の鑑賞者に向けて、このようなメッセージを送った。
「日本での初個展になります。ロンドンで見聞きしてきたところ、日本の方でもロンドンに興味を持っている人がたくさんいるとわかりました。また逆に、ロンドンにも日本に関心を持っている人がたくさんいます。ですので、今回ロンドンに関する作品を展示しますが、まったく訳がわからないということではなく、共通点や親近感を持ってもらえるのではないかと期待しています」
福島夏子(編集部)
福島夏子(編集部)