1月12〜14日、テクノロジーとアートを掛け合わせた最新カルチャーイベント 「DIG SHIBUYA(ディグシブヤ)2024」が初開催された。主催はSHIBUYA CREATIVE TECH実行委員会、共催は渋谷区。
メインプログラムは次の4つ。ロサンゼルス拠点のアーティストデュオFriendsWithYouをメインアーティストに招き、①彼らのキャラクターが渋谷公園通りを練り歩くパレード「ハッピーダンシング・レインボー・アライアンス(The Happy Dancing Rainbow Alliance)」(13日のみ)と、②代々木公園での《Little Cloud Sky》(12〜14日)の展示を実施。
さらに、③トークセッション「DIG SHIBUYA 2024 Opening Session」(12日のみ)、④毎夜24時から渋谷スクランブル交差点の大型モニターをジャックした映像エキシビション「Shibuya Crossing Night Art」が行われる(12〜14日)。
上記に加え、採択プログラムを実施。選出された13プロジェクトが、渋谷駅周辺で展示や体験イベントを開催する。
様々なカルチャーの発信地であり、近年は国内外のテクノロジー企業やスタートアップにも注目されている渋谷。そんな街の特性を活かし、最新テクノロジーを絡めたアートのイベントをスタートさせた。
ここでは本イベントの様子をレポートする。
渋谷駅から公園通りを上り、代々木公園ケヤキ並木に到着。つぶらな瞳がかわいい雲たちが目に飛び込んでくる。FriendsWithYouによる《Little Cloud Sky》のインスタレーションだ。
直径約2m、19個の雲による《Little Cloud Sky》は、人と自然との関係を讃えあうシンボルとして制作されたもので、FriendsWithYouの希望と平和への思いが込められているという。
FriendsWithYouはマイアミ生まれのサミュエル・アルバート・ボークソンと、キューバのハバナ生まれのアルトゥーロ・サンドバルが2002年に設立したアートユニット。世界にポジティブな影響を与えることを使命に掲げ、現代的なスピリチュアリティを創造するために活動する。世界各地で個展を開催し、Museum of Contemporary Art (マイアミ)にも収蔵されている。
Netflixの幼児向けアニメシリーズ『トゥルーと虹の王国』のアートワークを手掛けているのも彼らだ。FriendsWithYouとファレル・ウィリアムスが設立したクリエイティブ集団「I Am Other」が協力し、Home Plate EntertainmentとGuru Studioが制作する本作は、心優しいトゥルーとネコのバートルビーが虹の王国を舞台に人々の困りごとを解決するストーリーで、デザインのかわいさと明るいキャラクターが魅力的。筆者も本作のファンだ。
そんなFriendsWithYouの世界観が全開、カラフルに渋谷の街を彩ったのが、13日に開催されたパレード「ハッピーダンシング・レインボー・アライアンス」。
幸せな気持ちを世界中に広めることを目的にしたパレードで、かわいいキャラクターたちが音楽隊とともに渋谷の街を闊歩する。代々木公園を出発して公園通りを進み、渋谷PARCO前で折り返して代々木公園へと戻るというコース。45分間に及ぶ参加型アートイベントだ。
午後には渋谷公園通りを舞台に、FriendsWithYouのキャラクターと撮影できるグリーティングも行われた。
12日に行われたトークセッション「DIG SHIBUYA 2024 Opening Session」に登壇した際、FriendsWithYouは「世界を救う唯一の方法はアートだ。世界を変えることができるのはアーティストしかいない」と繰り返し語った。このポジティブで明快なメッセージと、そうした思いに貫かれた彼らの活動指針は、現代アートの世界において異端なものに感じられるかもしれない。
彼らは、「私たちは誰かほかの人や、自然とのつながりを感じるときこそ最高の気分になれる」と言い、そこにアートの原点を見出しているという。
「パレードでも、日常から抜け出して、自分の周りにあるものをよく見て、人とのつながりを感じるような瞬間を作り出したい。それは絵と1対1で対峙するような伝統的なアート鑑賞とはまったく違う。私たちはそれ以上の、他の人と体験を分かち合うようなアートを作りたいのです。私たちがやろうとしていることはコミュニケーションです。政治家は世界を救わない。企業も世界を救わない、ロックバンドだって本当に思っていることは、レーベルが望まないから言えない。私たちアーティストは、望むことをなんだって言えます。暗いこと、明るいこと、嬉しいこと、悲しいこと、なんだって言うべきです。アーティストにとってはこれが重要で、なぜなら物事を変えたり、思考に真の動きをもたらしたりする唯一の方法だからです。世界を救えるのは僕らしかいないのです」
一緒に登壇したギャラリーNANZUKAの代表、南塚真史から作品の持つ「Kawaii」要素について問われると、このように答えた。
「かわいさはとてもパワフルです。自己嫌悪や他人への憎しみに満ちている世界で、愛に溢れているというのは、いまできるもっともパンクなこと。大人になると遊び心を持っていてはいけない、大人しく冷静沈着で責任感に凝り固まっていなくてはいけないという奇妙な神話があります。でも実際は、もっともクリエイティブで革新的な人は、気まぐれで不思議な感覚を持っているものです」
彼らの雲はシンプルなイメージだが、そのコンセプトにある明るさは誰にでも理解できるとFriendsWithYouは言う。「パレードを通じてこの世界に少しの慈愛やかわいさを付け加えることができ、見る人に少しでも喜びを与えることができたら、私たちはいい仕事をしたと思えます」
「DIG SHIBUYA 2024 Opening Session」ではFriendsWithYouによるトークのほか、AIと自己表現をめぐるトークや、テクノロジーと音楽に関するトークなどが行われた。
また仏教美術とテクノロジーアートを融合させることを目指すクリエイターグループ「サイバー南無南無」がパフォーマンスを実施。読経と音楽、光、映像を組み合わせ、独自のグルーヴで会場を盛り上げた。
深夜からはDIG SHIBUYAのオープニングパーティーが開催。真鍋大度らのDJなど、見どころ満載のステージが繰り広げられた。
会期中毎日深夜24〜25時は、渋谷スクランブル交差点に屋外型エキシビションが登場。4つの大型モニターに、10組以上の国内外のアーティストによる映像作品が映し出される。
12日はDIG SHIBUYA official video program Asako Fujikura, FriendsWithYou, Ittah Yoda, Nile Koetting、13、14日はREFRACTION DAO program。
渋谷を象徴するスクランブル交差点がアートに染まる1時間だ。
代々木公園から渋谷駅周辺にかけて点在する複数の会場で、公募によって選ばれたプログラムも展示を行っている。
たとえば渋谷PARCO地下1階のGALLERY Xでは、「Proof of X」が展示を開催。NFTブームを牽引した「PFP(プロフィールピクチャ)」を取り上げ、このカルチャーがデジタルアイデンティティや金融化現象、キャラクター表現など広範囲にもたらした影響を探る。
SHIBUYA SACSでは作品やグッズの販売、展示を行う「渋谷国際NFTフェスティバル/遊戯苑」が開催。”TOKYO CULTURE”にインスパイアされたNFTアート、プロジェクト、コミュニティと日本の事業者の架け橋となり、新たなブランドビジネスの創出を目指す。
17時、辺りが暗くなってから始まるのが「シブヤピクセルアート」の作品だ。MIYASHITA PARK上階にある宮下公園に参加型アートが登場。カメラの前で人が動くと、背景に映し出されるピクセルアートが連動して楽しい。
また渋谷各所で、NFTアートのスタンプラリー企画「ALL JAPAN NFT STARS COLLECTION」が行われている。掲出されている作品QRコードをスキャンし会員登録すると簡単に限定NFT作品を入手できるという仕組み。40個を集めると、たかくらかずきの特別NFTがプレゼントされるなど嬉しい特典も。
そのほかのプロジェクトや詳細は、ぜひ公式サイトを確認してほしい。
渋谷がアート×テックに染まる3日間。この唯一無二の街が持つバイタリティがアーティストやクリエイター、そして観客によって増幅され、いつもと違った景色を生み出していた。
*Tokyo Art Beatを運営する株式会社アートビートは、本イベントのアート企画・回遊施策企画 (FUN FAN NFT提供)を担当したスタートバーン株式会社のグループ会社です。
福島夏子(編集部)
福島夏子(編集部)