2024年、Tokyo Art Beatは設立20周年を迎えます。この記念すべき年と、これまで/これからのアートシーンを祝福すべく、ユーザーの皆さんから「ベスト展覧会」を募るアワード企画とオンラインイベント、そして特集記事が進行中。
シリーズ「20年間のベスト展覧会」では、アートやカルチャーシーンで活躍する方々にTABがスタートした2004年から24年6月までに開幕した展覧会のなかで、記憶に残るものを1〜3点教えてもらいます。極私的な思い出から、現在の仕事につながる経験まで……展覧会にまつわるエピソードとともにお届けします。【Tokyo Art Beat】
*特集「TABの20年、アートシーンの20年」ほかの記事はこちらから
美術評論家の松井みどりがその評論活動のなかから掴み取ったコンセプトである「マイクロポップ」を打ち出して、ゼロ年代のアートを鮮やかに浮かび上がらせ、繊細にすくい上げた展覧会。子供のような、ささいな日常の想像力を現実世界に導き入れるその試みは、2011年の東日本大震災という過酷な現実の前にかすんだように当時は見えたかもしれない。しかし、「マイクロポップ」とはそもそも即応的な概念ではなく、2020年代半ばのいま、その成果について再考してよい時期がきているように思う。本展に合わせて『美術手帖』では、松井みどりと椹木野衣の初対談を2号にわたって掲載している(2007年5月号・6月号)。
福島第一原子力発電所事故によって帰還困難区域に指定されたエリアを会場にした国際展。住民や自治体から借り受けた会場に設置されながらも、避難指示が解除されない限り「見ることができない」作品の数々。作品は解除が長引くほどに経年変化は進行していく。ここで賭けられているのは、やはり想像力だろう。しかし、想像力が帰還困難区域の現実に届くには、その場所は限りなく遠い。この盲点を突いたキュレーションの鮮やかさは、東日本大震災への応答として時代を画するものだろう。2022年には、一部避難指示が解除されたエリアで小泉明郎の作品が公開された。DFWの持つ潜在性が現れるのはこれからかもしれない。
2001年に日本初の本格的な国際展として始まった横浜トリエンナーレ。それから23年、自然や地域の歴史を掘り起こした体験や交流を目指す観光・地域振興型の芸術祭、現代アートの啓蒙や祝祭を掲げる都市型芸術祭は、ともに動員や話題を広げつつその数を増やしてきた。が、コロナ禍を経たいま、その足元を見直す時期がきているように感じる。そのなかで中国からアーティスティック・ディレクター2名を迎え「野草:いま、ここで生きてる」をテーマにしたこのトリエンナーレは、観客とともにアートの想像力を持って現実の困難さに抵抗していくという、国際展の成熟したかたちをみせていたように思う。
20周年おめでとうございます!これからもお互い切磋琢磨していきましょう!!
*「Tokyo Art Beat」20周年を記念するアワード企画と特集を実施! ユーザーみんなで20年間の「ベスト展覧会」を選ぼう。
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