公開日:2024年7月10日

野中モモさんが選ぶ極私的「20年間のベスト展覧会」。2004〜24年のなかで記憶に残る展覧会は?【Tokyo Art Beat 20周年特集】

Tokyo Art Beat設立20周年を記念する特集シリーズ。野中モモさん(ライター、翻訳者)が選ぶ3展は?

野中モモ

2024年、Tokyo Art Beatは設立20周年を迎えます。この記念すべき年と、これまで/これからのアートシーンを祝福すべく、ユーザーの皆さんから「ベスト展覧会」を募るアワード企画とオンラインイベント、そして特集記事が進行中。

シリーズ「20年間のベスト展覧会」では、アートやカルチャーシーンで活躍する方々にTABがスタートした2004年から24年6月までに開幕した展覧会のなかで、記憶に残るものを1〜3点教えてもらいます。極私的な思い出から、現在の仕事につながる経験まで……展覧会にまつわるエピソードとともにお届けします。【Tokyo Art Beat】

*特集「TABの20年、アートシーンの20年」ほかの記事はこちらから

「日本の中のマネ ―出会い、120年のイメージ―」(練馬区立美術館、2022)

19世紀フランスでモダニズムの端緒を開いたとされるエドゥアール・マネが、日本でいかに受容されてきたかを検証。そうした歴史を踏まえたうえで最後に披露される福田美蘭の新作が圧巻。練馬区立美術館はこのほかにも「電線絵画展-小林清親から山口晃まで-」「生誕100年 朝倉摂展」「式場隆三郎 腦室反射鏡」など、わくわくする企画で楽しませてくれました。

会場風景より、村山槐多《日曜の遊び》

「エリザベス ペイトン:Still life 静/生」(原美術館、2017)

1990年代に出会って「このひと日本に生まれてたらコミケに、いやJ.Garden(創作JUNE、BL作品中心の同人誌即売会)に参加してただろうなあ! 」と思った画家。オタク文化としていわゆる「男性向け」の美少女表象ばかりがプレゼンされがちななかで、女性の「そういう感性」もアートの領域でしっかり育まれ、花開いていることが嬉しかったです。閉館してしまった御殿山の原美術館の思い出とともに。

「ヘレン・シャルフベック ─ 魂のまなざし ─」(東京藝術大学大学美術館、2015)

20世紀に築かれた白人男性中心の美術史を見直す試みがさらに勢いづいた20年。19世紀後半から20世紀前半のフィンランドで活動したシャルフベックも、そうした流れで国際的に認知されるようになったのだと思います。抑えた色調に絶妙な省略と抽象化、最近の作品だと言われても信じてしまいそう。こんな画家がいたのか! という驚きがありました。

ヘレン・シャルフベック 黒い背景の自画像 1915 キャンバスに油彩 フィンランド国立アテネウム美術館

*野中モモさんが執筆した、ヘレン・シャルフベックの伝記映画のレビューはこちら

<Tokyo Art Beatへのメッセージ>

これからもアートに夢をみたい私(たち)のよい案内役となる記事を期待しています。


*「Tokyo Art Beat」20周年を記念するアワード企画と特集を実施! ユーザーみんなで20年間の「ベスト展覧会」を選ぼう。

詳細は以下をご覧ください。読者の皆さんの推薦(終了)・投票(7月半ば開始)をお待ちしています!

*特集「TABの20年、アートシーンの20年」ほかの記事はこちらから

野中モモ

野中モモ

のなか・もも ライター、翻訳者(英日)。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジで美術史を学び、イギリスでの生活を経て現在は東京を拠点に文筆および翻訳業に従事。著書に、『野中モモの「ZINE」小さな私のメディアを作る』(晶文社、2020)、『デヴィッド・ボウイ 変幻するカルト・スター』(筑摩書房、2017)。訳書にヴィヴィエン・ゴールドマン『女パンクの逆襲──フェミニスト音楽史』(Pヴァイン、2021)レイチェル・イグノトフスキー『社会を変えた50人の女性アーティストたち』(創元社、2021)、『読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門』(ソウ・スウィート・パブリッシング、2024)など多数。