2024年、Tokyo Art Beatは設立20周年を迎えます。この記念すべき年と、これまで/これからのアートシーンを祝福すべく、ユーザーの皆さんから「ベスト展覧会」を募るアワード企画とオンラインイベント、そして特集記事が進行中。
シリーズ「20年間のベスト展覧会」では、アートやカルチャーシーンで活躍する方々にTABがスタートした2004年から24年6月までに開幕した展覧会のなかで、記憶に残るものを1〜3点教えてもらいます。極私的な思い出から、現在の仕事につながる経験まで……展覧会にまつわるエピソードとともにお届けします。【Tokyo Art Beat】
記憶に残る展覧会として、はじめに思い浮かんだのは「モダン・ウーマン」展でした。本展は男女平等の美術教育を奨励したフィンランドの女性芸術家を特集した日本では初となる試みで、小規模ながら、美術史的な価値のある展覧会だと思いました。
どんな展覧会も始まれば終わりますが、図録には終わりがありません。本展の図録は私にとって重要な展覧会図録のひとつです。とくに美術館やコレクションについて考えるときの大切な一冊で、いつも手元におき、何度も読み直しています。
品川にあった原美術館での「ミヒャエル・ボレマンス」展(2014)でその名前を知り、卒業論文のテーマに選んだ直後に、偶然にも開催されたジョルジョ・モランディの個展。兵庫と東京と合わせて6回見に行きましたが、繰り返し見るほどにモランディの描く瓶や壺がいかに不確かな存在であるかを実感し、「目に見えるものよりも抽象的なものは何もない」というモランディの残した謎めいた言葉の意味に触れたような気がしました。本展に対してもそうですが、モランディについては誰もがよい芸術家であると語ります。特に画家であれば、モランディを否定するひとはいないでしょう。私の批評は、この「よい」とされる暗黙の了解の研究から始まりました。
ウェブメディアが20年も続いていることは偉業だと思います。末永く続くことを願っていますが、いまは美術メディアにとっては危機の時代だとも感じています。少なくとも30年後から振り返ったとき、それでも我々はさぼらずになんとかやったと言えるような活動を、私もしていきたいと思っていますので、ぜひ今後ともよろしくお願いします。
*「Tokyo Art Beat」20周年を記念するアワード企画と特集を実施! ユーザーみんなで20年間の「ベスト展覧会」を選ぼう。
詳細は以下をご覧ください。読者の皆さんの推薦・投票をお待ちしています!