地域の活動拠点をつくるリノベーションホテルブランド「THE SHARE HOTELS」が、7月15日、東京浅草駅周辺にアートストレージ(収蔵庫)を持つホテル「KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS」をグランドオープンする。
地下1階から6階まである当館は6つの現代アートギャラリーが作品を収蔵し、一部の作品は宿泊客だけでなく誰でも鑑賞可能。1階は宿泊客以外も入ることができる2つのアートストレージ、企画展示室、バーがあり、地下1階は宿泊者のみが利用可能な共有スペースと6つのアートストレージが設置されている。また当館で展示するために開催された「KAIKA TOKYO AWARD」の入選作品16作品も館内に展示されている。
アートストレージとホテルが融合した新しい現代アートの拠点をレポートする。
浅草駅から徒歩10分ほどのところに建つ、元々倉庫として利用されていた建物をリノベーションした「KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS」。「KAIKA」には棚を公開する「開架」式収蔵庫、人知や文化の「開化」、物事が盛んになる「開花」の3つの意味があり、公開するアートストレージを通して、若者アーティストの応援、日本のアートの盛り上げが意図されている。
エントランスを入ってすぐ左側にあるのは企画展示室。2021年3月までの展示内容はすでに決まっており、しばらくの間はストレージを使用するギャラリーによって2、3ヶ月毎に持ち回りで企画が行われる。
7月15日のグランドオープン後は、ファッションブランド「NORITAKA TATEHANA」を設立し、制作したヒール靴をレディー・ガガが愛用するなど国内外で活躍をみせる舘鼻則孝の個展「FORM AND COLOR」が開催される(7月15日〜8月16日)。
アートストレージには、「CLEAR GALLERY TOKYO」「KOSAKU KANECHIKA」「NANZUKA」「VOILLD」「Yoshimi Arts」「YUMIKO CHIBA ASSOCIATES」の6つの現代アートギャラリーが現在作品を収蔵し、常にその内容が変化していくところも見どころ。
所蔵庫は、展示するためのホワイトキューブのようなギャラリー空間ではなく、かつて駐車場だった跡やフェンスを用いるなどストレージらしい無機質なデザインを採用。作品がより空間に溶け込むための空間づくりがなされている。
無機質でドライなストレージ空間の一方で、ホテルとして居心地よく落ち着いた空間を提供するためインテリアデザインなどに工夫が施されている。1階のフロントやバーなどに置かれたベンチやテーブルは収蔵庫らしい下地材をそのまま露わにしているが、温かい質感のある材料を使用することでホテル空間を保っている。
壁などに用いられている塗料も各階で微妙に色合いが異なる。ストレージがメインの地下1階は、寒色系と暖色系の中間色であるグリーングレーを使用し、他の階に比べて明度が低い。1階は少し明るめのグリーングレーを使用し落ち着いた空間を演出。客室はさらに少し彩度をあげ居心地の良い空間を生んでいる。
地域の文化芸術活動の一翼を担う「KAIKA 東京 by THE SHARE HOTELS」は、活動の一環として<KAIKA TOKYO AWARD>を開催。館内共有部に収蔵・展示するアート作品の公募を行った。審査員は東京芸術大学大学美術館長で教授の秋元雄史と、企画展示室で個展をする舘鼻則孝。KAIKA AWARD TOKYO大賞、秋元雄史賞、舘鼻則孝賞に加え、入選作品を合わせると16作品。アワードを主催する株式会社ノエチカの高山健太郎曰く、秋元は「楽屋裏でスタンバイする俳優のような作品を選びたい」と審査に臨んだという。これから開化していくであろう作家たちの作品は館内の様々なところに展示されている。
大賞の新藤杏子の《drawing of one day》は作家自身が入院中に出会った人々を描いたものだという。秋元雄史賞の梶浦聖子の《色を聴くウサギ》は、子どもの不安を解消する人形を4mほどまでに巨大化させ、大人や社会の不安を飲み込む人形として制作。舘鼻則孝賞の加藤智大の《iron-oxide painting “W.S./T****68″》は、アメリカの名前もわからない受刑者の写真をインターネットから使用した作品となっている。
ホテルは個室タイプが全10種73室の客室を用意。定員2名や通常では珍しい4名の客室が中心で、最大6名部屋までバリエーションは豊か。一室9000円から宿泊可能となっている。
館内には収蔵庫だけでなく、昼から夜まで利用できるバーやグッズショップも併設されている。宿泊はもちろん、訪れるだけでも楽しいアートストレージのあるホテル。気軽に訪れたい現代アートの新しい拠点だ。