Sadamasa Motonaga, The Shapes Above are White, 1993, acrylic on canvas, 24 1/8 x 20 x 7/8 inches, Photo: SAIKI

元永定正 + 中辻悦子 「記憶の残像」

BLUM
残り2日

アーティスト

元永定正、中辻悦子
2025年2月6日、BLUM は、元永定正と中辻悦子の当ギャラリーへの所属、並びに2月14日(金)より BLUM東京にて元永・中辻の2人展を開催いたします。さらに、今後1年を通じて、それぞれニューヨークおよびロサンゼルスにて両作家の個展を開催予定です。

1960年から夫婦となった元永定正と中辻悦子は、元永が2011年に他界するまで、時には共同で、時には個々の活動を通じ、戦後日本の前衛芸術活動の発展に大きな貢献を果たした。1950年代に結成された具体美術協会の初期メンバーとして⻑く敬されている元永は、鮮やかな色彩を駆使した絵画、廃材を用いた実験的作品、また絵本の制作などを通して、生命の哀愁を遊び心に満ちた表現で描き出す独自の才能を多大に発揮した。一方、中辻は美術を学んだ後、阪神電鉄百貨店部に入社し、宣伝課でグラフィックデザイナーとして活躍しながら、⻑期に渡り夫の制作活動と家族を支えた。そのような生活においても、中辻は一貫して創作制作を続け、初期に、ポコピンと呼ばれるファブリック·オブジェ制作を手がけている。元永、中辻、両者の絵画作品はいずれも抽象的だが、どちらも人間の知覚や身体性に深く関わった表現である。元永の後期作品は、そのグラフィカルな表現の中で、曖昧とした知覚の幻影を追求する要素が強く感じられるが、このテーマは中辻自身も何十年にもわたり取り組んできたものである。

1957年、中辻は西宮美術教室で須田剋太や津高和一の元で美術を学んだ。この教室で中辻は、すでに具体メンバーであった元永と出会い、具体のリーダー、吉原治良の「人の真似をするな。誰もやってないことをやれ」という具体理念に深く感化される。
1960年、二人は同居を始め、2年後に⻑男が誕生。


元永は 1955年と 1956年に芦屋公園で開催された「野外具体美術展」で元永の野外作品として広く知られている「作品 (水)」を発表し、1957年に中辻と出会った際にはキャリアを確立しつつあった。1962年、具体ピナコテカ展のオープニングに伴い、具体はジョン・ケージ、クレメント・グリーンバーグ、イサム・ノグチ、小野洋子など、国際的なアーティストや批評家たちとの交流を深め、国際的な存在感を示し始めていた。抽象表現が絵画の論理的な帰結に繋がると考えられていた時代において、具体の先駆的なインスタレーションやキャンバス上でのパフォーマンス·実験行為は、これまでにない斬新さを持ち、神聖化された常識の境界を軽く飛び越えて行った。元永自身、アラン·カプローの『アッセンブラージュ・エンバイロメント・ハプニング』(1966)などの書籍で紹介され、NY近代美術館で開催された「The New Japanese Painting and Sculpture」(新しい日本の絵画と彫刻) 展など、多分野にわたる制作活動が国際出版物や展覧会で注目された。

一方、中辻はグラフィックデザイナーとしてフルタイムで働く傍ら、寝具のあまった布を使用したオブジェ制作に取り掛かり、「ポコピン」と呼ばれる人形(ひとがた)のオブジェを自宅の天井に吊るし、初期作品として完成させている。この作品は元永を訪ねた東京画廊の山本孝の目に惹かれ、1963年に東京画廊でポコピンのインスタレーションを含めた初個展が開催された。

展示は好評を博し、その後の中辻の創作活動の基盤となる。この作品群は、1920年代シュルレアリスムの没入型インスタレーションを彷彿とさせつつも、可愛らしさという魅力を超え、生と死の境界に横たわる有機的な神秘性を帯びている。「変わっていて、面白い資質に満ちた人物を映し出すような物体・人の造形についていつも考えています. . . 人の形を通して、色、線、形が、明るさやユーモア、平和なイメージへと繋がって行くのです」と語っている。中辻が絵画制作に復帰した後期のシリーズでは、初期のポコピンに込められたテーマが反映され、さらに発展する。

1983年の草月プラザでのグループ展「空間へ向かって」では、吊るされた「目」が付いた布と下駄を組み合わせたインスタレーションで、心理的な象徴性と身体性を感じさせる展示となっている。「Running Works 3 x 6 #1」(1990年)と題した作品もまさにこのテーマを扱っており、目を示すシンプルな記号、赤く塗られた表面に隠れるように配置された一本のロープ、そして合板の下に置かれた下駄が一体となって擬人化の効果的なシグナルを形成し、心と身体を投影する。同様に、中辻の「合図―eyes―」や「人形(ひとがた)」シリーズも、部分的なオブジェや幾何学的なシルエットを描き、大胆で生き生きとした線が口や鼻人のイメージを形作る。胴体がないにもかかわらず歩いているように見える特徴的な漫画的な脚、そして時には後光のような輝きを持つ中辻の象徴的な目が描かれる。

元永の初期作品と後期作品を比較すると、抽象表現やインスタレーション作品から始まり、1966-67 年の NY 滞在を経て、蛍光色やグラデーションをより多用するスタイルとなり、最晩年には色彩のグラデーションを帯びた大きな形状が登場するようになるという変化を観察することができる。「キコキコ」(1973)は、力強い螺旋状のグラデーションがかかるフォームの一例であり、大胆なグラフィックの存在感を示し、「きいろべえるかたちたち」(1993 年)では、多くの擬人化された形態が含まれ、身体の一部やその下にある手足を思わせる特徴的な部分が、生きているものを暗示している。

元永と中辻の制作は、元永の具体への関与で大きな影響を具体から受けながらも、中辻のグラフィックデザイナーとしての経験や、夫婦による子ども向け絵本制作の協働を通じて、最終的には互いのスタイルが統一感を持つようになっていった。元永作品が具象表現へと発展し、中辻が絵画制作に復帰する中で、世紀の変わり目には二人の作品は誰の目にとっても明らかなように互いに共鳴している。「具体の精神が刷り込まれていた私にとって、元永定正を意識しないわけにはいかないが、異なるフォーマットでそれぞれが制作していたとしても、2 人の価値観は大きく変わらなかったのです」と中辻は述べている。

スケジュール

開催中

2025年2月14日(金)〜2025年4月4日(金)あと2日

開館情報

時間
12:0018:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日

オープニングパーティー 2025年2月14日(金) 17:00 から 19:00 まで

入場料無料
展覧会URLhttps://blum-gallery.com/exhibition?lang=eng&filename=1738631497933x200927331754442750
会場BLUM
https://blum-gallery.com/
住所〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-14-34 原宿神宮の森 5F
アクセスJR山手線原宿駅竹下口より徒歩1分、東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅2番出口より徒歩2分
電話番号03-3475-1631 
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