「Once Upon a Time」と題された本展覧会では、おとぎばなしに登場する人物やアイテムがテーマに選ばれ、それらが身体のイメージと重ね合わされた彫刻作品が発表されます。おとぎばなしにある「むかしむかし、あるところに」という本展タイトルにもなっている世界共通の決まり文句は、特定の時代や場所に縛られず、物語を特殊な時間と空間としてあつかっています。中澤はこれらの物語に出てくるモチーフを自身の彫刻に重ねることで生み出される新たな時間と空間に関心があるといいます。中澤の作品からは、表面的には大小無数にあるさまざまな物語が断片的に切り取られて再構築を繰り返しながら紡がれていく現代の社会構造が見て取れるかもしれませんが、と同時にその内部にある精巧かつ粗い表現に人間本来の持つ豊かな魅力が感じられるのです。
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