ⒸIwauko Murakami

村上賀子 「Known Unknown」

コミュニケーションギャラリーふげん社
10月4日開始

アーティスト

村上賀子
このたび、写真家・村上賀子の第23回三木淳賞受賞作《Known Unknown》の写真集がふげん社より刊行されます。刊行に際しまして、2024年10月4日(金)から10月27日(日)までコミュニケーションギャラリーふげん社にて個展を開催いたします。

村上賀子は、1986年宮城県仙台市生まれの写真家です。2012年に武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程デザイン専攻写真コースを修了、在学中は写真家の山﨑博に師事しました。2022年に、《Known Unknown》で第23回三木淳賞を受賞。現在は、東京を拠点として、記憶やアイデンティティーを社会的出来事や環境と相関的に捉えながら、可視と不可視のイメージを交錯させる写真プロジェクトに取り組んでいます。

本展では、《Known Unknown》シリーズから約30点を展示いたします。このシリーズは、作家とほぼ同世代の女性を被写体に、自宅や仕事場など、彼女たちが自然体でいられる場所で撮影されています。中判カメラで撮影されたそれらの写真には、被写体の顔ははっきりと写っておらず、その反面、彼女たちのいる空間や身に纏うものなど風景の細部は鮮明に写されています。

本プロジェクトの端緒は、2011年の東日本大震災まで遡ります。当時、徐々に平時に戻っていく東京で、故郷の惨状への名状しがたい感情に蓋をしながら気丈に振る舞い生活していた村上は、ある出来事をきっかけに、本当は自分が深く傷ついていたことを知り、自分自身の「わからなさ」を、身をもって知ることとなりました。また、計画停電中の自室で撮影したセルフポートレートを一年後に見返した時、逆光でほとんど顔が見えないそれは、鑑賞者と被写体の「見る/見られる」の関係に収束しない、強さと危うさの両面を内包する実存として立ち現れていることに気づきます。震災に紐付くこれらの二つの象徴的な体験が、村上が本プロジェクトに取り組むきっかけとなりました。

《Known Unknown》のポートレートは、「もっとも身近な他者は、自分自身」「その身体は、自分があつかう対象でありながら、自分そのものでもある」と作者が語るように、身体の両義性を孕むイメージです。また、美術史において長らくモデルとして「見られる」存在であった女性が、顔を見せず、「見られる」ことを意識しない、ありのままの状態として写されているという点において、新時代のポートレートであると言えます。撮影者と被写体という一方的で非対称な関係ではなく、両者ともが現代社会に生きる女性であることで、二者の間にあるカメラが鏡のように作用し、肖像写真のあり方を、境界線の曖昧な、揺らぎのあるものにしています。

顔の見えない彼女たちに、鑑賞者はいつの間にか親近感を覚える、ということもあるかもしれません。ポートレートを見た時に立ち現れる、自己と他者の境界線の曖昧さ、存在としての不確かさを前にして、皆さんは、彼女たちの肖像をどのように解釈するでしょうか。

写真集には、『おいしいごはんが食べられますように』で現代社会における人間関係と心理描写を鋭く表現し、2022年に第167回芥川賞を受賞した小説家・高瀬隼子さんに寄稿していただきました。展覧会会期中には、作家と同世代であり、ポートレートと密接な関係にある彫刻を研究されている小田原のどかさんをお招きして、ギャラリートークを開催いたします。

スケジュール

2024年10月4日(金)〜2024年10月27日(日)

開館情報

時間
12:0019:00
土曜日・日曜日は18:00まで
休館日
月曜日、祝日
入場料無料
展覧会URLhttps://fugensha.jp/events/241004murakami/
会場コミュニケーションギャラリーふげん社
https://fugensha.jp/
住所〒153-0064 東京都目黒区下目黒5-3-12
アクセス東急目黒線・東京メトロ南北線・都営三田線・JR山手線目黒駅西口より徒歩17分、JR山手線目黒駅西口より東急バス「元競馬場前」下車徒歩1分
電話番号03-6264-3665
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