DAISAK 「NEO FULL SUPPORT BODY」

MARGIN
9月27日終了

アーティスト

DAISAK
MARGIN は8月31日(土)よりDAISAK(1986-)の個展「NEO FULL SUPPORT BODY」を開催いたします。本展では、2022年に陶芸の森で制作された「WOMEN SLEEP SPACE」「TYRANNOSAURUS」に加えて、新作の立体作品20点、小作品30点を発表いたします。

DAISAKは、これまで陶芸技法を使って美術と日用的なプロダクトの分野で制作を続けてきました。愛らしいキャラクターや、身の回りのものをモチーフにしたユニークな造形、シルクスクリーンでテキストを焼き込む手法は彼の作品を特徴づける代表的なスタイルとなっています。

制作において「なにかわかるものを作りたい」と語る彼は、一目でそれとわかる自明性を端的に表現する独特のセンスを持っています。モチーフの多くは、石や草、川といった自然を思わせる身の回りにありふれたもので、恐竜や原始人などプリミティブな要素もしばしば登場します。これらは極めて簡潔であると同時に、ものの個別具体性には触れない絶妙な抽象度を保ちながら、DAISAKが「キャラ立ち」させると形容する通りの明確さを持っています。

物体に直接テキストを刻み込んで物体を補完(サポート)する説明的な手法は、「NEO FULL SUPPORT BODY(ネオフルサポートボディ)」というコンセプトで、新作の中で様々な方法でさらに推し進められています。テキストを刻んだ〈STONE〉や〈POTATE〉の他に、〈HOUSE〉や〈SUPPORT A BRANCH〉では、それぞれ家や小枝の存在を強調するように支柱で支えられており、〈SUPPORT UNDER STONE〉における台座は、まるでその上に置かれた石が特別なものとして讃えられているような趣きを呈しています。

「そのものが何なのかを圧倒的に知らせる」と同時に、「物理的にものを支えている状態と、その様を見せる」というスタンスは、逆説的にその自明性を崩壊させるメタな視点をもたらします。「これはパイプではない」と書かれたルネ・マグリットの絵画《イメージの裏切り(1928-29)》において、テキストの自己言及的な解釈によって、そのテキストも上部に描かれたパイプ自体もそれらを内包するメタなレイヤーに属する絵画の一部であるという事実が浮き彫りなるのと同じように、DAISAKの場合、真逆のプロセスで物体のイメージを裏切ります。いかにも自然から選択されてただ空間に配置されたかのような石らしい外見を持つ〈STONE〉は、作品そのものに目を向けた途端、実際には空洞(虚)を抱えた陶器であることがわかります。自らが「石である」ことをテキストによって補強しようとする試みは、テキスト自体も作品の一部であり、逆説的に自らが「石ではない」という事実を強調し、自己主張する個々の存在は、テキストや支柱、台座といった外的なサポートによって補完されているかのように見えながら、むしろ作品全体の虚構性を浮き彫りにするのです。

「言葉による虚構(フィクション=物語)の獲得が、人類の大規模な共同社会の基盤を形成した」というユヴァル・ノア・ハラリの解釈を借りれば、DAISAKの作品はまるでこれから文明を築こうとする原始人が、生活に必要な最低限の事物に名称を与え、虚構を共有し始めた最初期のようなプリミティブな感覚を与えます。石を拾い、草を愛で、壺に溜めた飲み水がなくなれば、また川に汲みに行き、時にささやかな球技に戯れることができれば、想像力に委ねられた大きな余白の中で平穏無事に暮らしていけそうなDAISAKの作品世界の中で、事物はまだ必要以上に多くの情報や意味を持っていません。文明が進むにつれて、分類され、切り分けられ、素材となり、別の物質となりうる潜在性を宿しながら、ものがありのままの姿で存在することを許されているようです。

DAISAKは作品の中で自明であることを強調する一方で、「なにかはわからなくてもいい」という一見相反するような創作姿勢を持ち合わせています。ナスカの地上絵のように時代錯誤遺物とも言われるオーパーツが、圧倒的な存在感を持ちながらも、そこに内在するメタメッセージには到達不可能であるように、DAISAKの作品には自明性の裏に存在の特定を拒む反発力を持っています。彼の創作全般に共通する匿名性への憧憬は、70年代のアメリカの玩具やオブジェに見られる匿名のキャラクターに対する少年期からの関心に由来しています。製造元や生産数といった背景情報がなくても、その佇まいに惚れ込むことができ、むしろ特定の意味を付与されていないからこそ、特別なものとなりえたような想像力の余白は〈MOUNTAIN〉や〈RIVER〉、〈GRASS〉などの極めて記号的な造形物や、〈NATIVE SET〉や〈壺屋〉に登場する名前のない愛らしいの人物の中にこもっています。

一目でわかる親しみやすさを持ちながらも民藝にも通じる素朴な匿名性を共存させるこれらの作品群は、陶芸技法と長年向き合ってきたDAISAKならではの創作に対する精神性が反映されています。京丹後の自然の中で、土をひねり、火と格闘して作られた元々は大地そのものでもあったDAISAKの作品は、吸い寄せるようにその空洞に鑑賞者を招き入れます。どのようにでも形を変えられる粘土は、大地そのものでも存在を大きく主張すればするほど壊れやすくなります。破裂しないためには空洞(虚)を作品の内部に抱え込む必要があるように、事物のアイデンティティは、それを支える外部のサポートとの相互依存的に成り立っているのかもしれません。軽やかなユーモアと確かなクラフトマンシップを兼ね備えたDAISAKの作品世界をどうぞお楽しみください。

スケジュール

開催中

2024年8月31日(土)〜2024年9月27日(金)あと10日

開館情報

時間
12:0019:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
入場料無料
会場MARGIN
https://www.instagram.com/margingallery_jp/
住所〒103-0003 東京都中央区日本橋横山町4-10
アクセス都営新宿線馬喰横山駅A1出口より徒歩1分、JR総武線馬喰町駅1番出口より徒歩徒歩1分
電話番号070-4000-8007
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