日本初の大規模アーティストブックフェア『ZINE’ S MATE, TOKYO ART BOOK FAIR』が7月10日から12日まで開催されました。アート本に関わるユトレヒトの江口宏志氏とPAPERBACKのオリバー・ワトソン氏がディレクターをつとめた今回のフェアは、表参道エリアの2つの会場を舞台に展開されました。大盛況のイベントで3日間で8,000人以上もの来場者がありました。
本は買うものから作るものになったとよく聞くけれど、実体はどうなのだろう?と、ぼんやり思いながら会場に到着し、小回りの利く少部数の手づくり本の味わいと、本屋に流通している雑誌の違いを再認識して、高校生の頃に作った手づくりフリーペーパーの淡い記憶と、インターネットが普及していなかった当時、雑誌がボロボロになるまで読んで情報を仕入れていた、本への想いを初心に巻き戻して挑んだフェアでした。
本屋でなかなか手にとれない少部数のアーティストブックや、流通に乗っていない手づくりのzine、作ったアーティストがその場で手売りする贅沢な写真集やマンガ本まで…、たくさん立ち読みしてたくさん買って、友達とも知らない人ともたくさん話して、そしてたくさん売りました!実は私も出品作家としてこっそり参加した、ぎゅっと詰まった3日間を写真多めでレビューします。
■ EYE OF GYRE 会場
■ VACANT
写真左は宮城県塩釜でbirdo flugasというギャラリースペースを運営している高田彩さん。カナダ人のアーティスト紹介に力を注いでいて、彼らのzineやポストカードなどを販売しています。私もMarc Bellの繊細な線描と土地が擬人化されている絵にやられて作品集を購入しました。やっぱり彼女もたくさんの人と話をすることで、自身の塩釜のギャラリーの告知にもなったり、お隣さんとも仲良くなったりしたそうで、楽しそうに私に話してくれました。私も久しぶりの再会でうれしかったです。
そのお隣さんは、Jon Chandlerというアーティスト。写真を撮っていいかと確認すると「机の上を整頓したほうがいいかな?」とのことでしたが、あえてごちゃごちゃのまま撮影させてもらいました。私が欲しかった彼の描いたマンガは売り切れだったので後日送ってくれるとのこと。もらったDMをよく見たら、人の胴体が魚の切り身のように描かれていてヤバい感じでした。マンガ本を受け取るのが楽しみです。
■ 最後に…、私も参加しました!
3日間の店番、相当楽しかったです。デスメタル好きや、メキシコに興味のある人も集まって、普段あまりお話する機会のない若い学生さんともお話しました。普段、制作する方々をサポートすることが多いとうっかり抜けてしまう、「相手に作品が今、伝わってる!」という瞬間がたくさん目の前に出現して、気を引き締めなくては、と再認識しました。
写真のお家はekkoの木版による立体作品。
■ おつかれさまでした。
最後にちょっとだけ思った勝手な事を。普段足繁く見て回っている彫刻や絵画の若い作家の作品集がもっとあったらな、なんて思いました。作品は高かったり保存するには自宅が狭かったりして買えない事もあるけど、資料としてポートフォリオを売って欲しいことはとても多いのです。(稀に無理を言って売ってもらうこともあったりしますが。)
それからデザイン系や写真系のギャラリーやアーティストが多かったように思うので来年は是非、もっと多くのジャンルのアーティストや多くの分野の出版社の方に参加して欲しいなと個人的には思った次第です。それから、「これ、自分で作ったフリーペーパーですよろしく!」という手渡し型zineを頂いたのはたった一人の作家さんのみでした。もっと多いかと思っていたので、残念。迷惑を顧みず、じゃんじゃん配って歩くなんていうのも面白い。忙しかったら邪険にされるかもしれないけど、出展者も見に来ているお客さん全員に買ってもらおうとまでは思っていないし、私はそういう場所で会った作家さんのことを意外と覚えています。
本という形式が多様化し、インターネットで様々な情報を得る時代に、ものの持っている力や手づくりの味わいのある本がどのように広がっていくのか見るのはとても楽しいです。来年のZINE’S MATEも楽しみにしています!
Sayako Mizuta
Sayako Mizuta