11月27日に行われた参議院予算委員会で、参議院議員の吉川ゆうみから「現代アートを“稼ぐ力に”」という提言がなされた。
吉川議員は、日本の財源のために地域づくり、観光、農業、漁業を「稼げる」という観点で活発化させるため、政府の支援が必要であると主張。そのなかで現代アートを核にした「稼ぐ力」も重要視すべきと述べた。
アートバーゼルとUBSによるアートマーケットのレポートで、世界の富裕層のアートへの投資配分は5%から20%以上と推定され、富裕層はアート、とくに現代アートへの関心が非常に高いとして、「日本の(海外)富裕層に対するインバウンド戦略としてアートを活用するのは必要不可欠」と吉川議員。アートウィーク東京やArt Collaboration Kyoto、Tokyo Gendaiといったフェアには海外の富裕層が多数来日し、併せて日本各地を訪れ消費を行っていると指摘した。
また、スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館のように、日本の現代アートをまとめて見ることができる常設の美術館が必要だとの認識を示し、たとえば六本木の国立新美術館を改組し、常設展示を備えた国立現代美術館とするなど、日本の現代アートの国際的拠点を形成するのも富裕層拡大には有効だと提案。
昨年、経産省初の「アートと経済社会について考える研究会」が立ち上がったが、アートによる稼ぐ力をさらに拡大するために文部科学省、公立美術館でのアート購入促進ということで総務省、観光では国土交通省、相続税や企業の減価償却の上限の引き上げでは財務省など、省庁が横断的に連携し政府として積極的に取り組むべきだと提言した。
文部科学大臣の盛山正仁はこれに同調し、「関係省庁と連携してまいります」と発言。
内閣総理大臣の岸田文雄は、「インバウンド需要拡大のために富裕層にとって関心の高い現代アートを活用するという考え方は重要であると認識をしております。そしてすでに文化庁を中心とする取り組み、あるいは国立美術館を中心とする取り組みをさせていただきましたが、政府一丸となって日本における現代アートの国際的な拠点形成などこのインバウンド拡大にもつながる取り組みを盛り上げていくという考え方は政府としても重要視してまいりたいと考えます」と回答。
古川議員は、それらの答弁に感謝の意を示すとともに「国立の美術館が拠点となることが重要」だと締めくくった。
野路千晶(編集部)
野路千晶(編集部)