公開日:2022年2月28日

ロシアのプッシー・ライオット、ウクライナ支援のためにブロックチェーン技術を用いた基金開設

ロシアのアクティヴィスト・グループであるプッシー・ライオットらが「ウクライナDAO」を開設。ウクライナの市民団体への寄付が目的。

「UkraineDAO」のウェブサイトより https://www.ukrainedao.love

2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始したことを受け、ロシア国内でもデモをはじめ様々なかたちで反戦活動が行われている。

ロシアのアクティヴィスト・グループでフェミニスト・パンクロックバンドのプッシー・ライオットは、日本時間2月25日、「ウクライナDAO(UkraineDAO)」というウクライナへの支援基金を立ち上げたと発表した。

Twitterの公式アカウントによると、「私たちが基金を立ち上げた目的は、プーチンが始めたウクライナとの戦争から人々を助けるウクライナの市民団体のために寄付すること」だという。

資金調達の方法として、ウクライナ国旗のNFT(非代替性トークン)を1万枚販売する。NFTを共同購入できる「Party Bid」を介して、誰でも任意の額を送れる仕組み。日本時間27日には、プロジェクト開始から40時間で、すでに180万ドル(約2億800万円)を調達しているという(*1)。

収益は全額寄付する予定。寄付先の市民団体としては、クラウドファンディングをもとにウクライナ人兵士を支援するキーウ(キエフ)拠点のNGO「Come Back Alive」、ドネツィク(ドネツク)およびルハンシク(ルガンスク)で人道的支援を行うNGO「プロリスカ」の名前があがっている。

「ウクライナDAO」はプッシー・ライオットのほか、NFTのキュレーションなどを行う「Trippy Labs」、デジタル・アーティストとコレクターによるコレクティヴ「PleasrDAO」らが共同で開設。

DAO(Decentralized Autonomous Organzation)は、日本語では「自律分散型組織」と訳されるもので、ブロックチェーン上で世界中の人々が協力して管理・運営を行う組織。統率する代表者が存在せず、参加者同士で意思決定を行う。ルールはスマートコントラクトで実行され、透明性の高さが特徴とされる。

プッシー・ライオット 出典:Wikimedia Commons(Игорь Мухин)

プッシー・ライオットは2011年結成。以降、アートや音楽によってアクティヴィズムを行なってきた。2012年、モスクワの救世主ハリストス大聖堂で、当時ウラジミール・プーチンが大統領に再選したことへの抗議活動として反プーチン・ソングを演奏するという無許可のパフォーマンス「パンク・プレイヤー」を行い、国際的に知られるようになった。この「パンク・プレイヤー」によってメンバー3人が逮捕、実刑判決を受けている。また2018年にはFIFAワールドカップロシア大会での決勝戦中にピッチ内に侵入し、政治犯の釈放を要求するなど政治的主張を行なった。

プッシー・ライオットは2015年頃からブロックチェーン技術に興味を持ち、21年には初めてNFT作品を販売している。作品は楽曲「PANIC ATTACK(パニック・アタック)」のミュージック・ヴィデオを4分割したもので、数千万円相当の収益をあげた。この収益はグループの活動資金と、女性のためのシェルター支援に充てるためのものであった。

プッシー・ライオットがブロックチェーンやNFTに関心を持つようになった背景には、メンバーの銀行口座がロシア政府からたびたび閉鎖されたという経験があるそうだ。創設メンバーのナジェージダ・トロコンニコワは、「活動家として、どの政府にもコントロールされていないツールを見るのはとてもエキサイティングなことです」とTechCrunchのインタビューで答えている(*2)。

暗号資産によるウクライナ支援の寄付はすでに様々なかたちで行われているが、アートや表現活動を行うコミュニティのなかでこのような試みが今後どのように広まっていくのか、注視したい。

*1──CryptoStΞvΞ @DefiHopeのツイート(午後7:46 · 2022年2月27日)
*2──TechCrunch Japan「NFT(非代替性トークン)をフェミニストのために使うバンドPussy Riotが「サイファーパンク」の力を示す」(文:Leigh Cuen、翻訳:Hirokazu Kusakabe)https://jp.techcrunch.com/2021/03/26/2021-03-25-pussy-riot-shows-the-cypherpunk-power-of-feminist-nfts/

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