公開日:2025年2月17日

中国・陶器の町に隈研吾建築の美術館UCCA Clayがオープン。陶芸建築が織りなす現代陶芸の新地平

2024年10月、中国・宜興に新たにオープンしたUCCA Clay:現代陶芸の新たな拠点。同年11月に日本のメディアとしては初めて足を踏み入れた開館記念展をフォトレポート

UCCA Clay外観 撮影:2024年11月

UCCA Clayが2024年10月開館

中国江蘇省宜興(イーシン)市は、3000年以上の歴史を持つ陶磁器の産地として知られ、「陶都」の別名を持つ。上海と南京のおよそ中間に位置し、いずれからも高速鉄道で片道1時間半ほどで到着できる。その宜興に、2024年10月、現代陶芸に特化した美術館UCCA Clayが開館した。設計は世界的に著名な建築家、隈研吾だ。

UCCA(尤倫斯当代芸術中心)の4つ目の美術館

新しい街区に突如現れるUCCA Clayの建築

UCCA Clayは、UCCA(尤倫斯当代芸術中心)の4つ目の美術館だ。北京のUCCAの姉妹館として、中国における現代陶芸の振興と国際的な文化交流を目的に設立された。UCCAは2007年に北京の798芸術区に開館して以来、経営母体を変えながらも上海のUCCA Edge北戴河のUCCA Duneといった拠点を次々と展開している。

UCCA Clay外観 撮影:朱迪(AGENT PAY工作室)

UCCA Clayの建つ宜興は数千年にわたる陶芸の歴史を持つ地であり、紫砂(宜興で採掘される土の総称)陶器の発祥地としても知られている。再開発された「陶二厂文化街区」の中心に位置することから、地域コミュニティと国際アートコミュニティの橋渡し役も期待されている。

UCCA Clay外観

陶芸と建築が結びつく特異な外観の隈研吾建築

隈研吾は自然素材を活かした建築で知られているが、UCCA Clayでも地元産の竹やレンガを多用することで、周囲との調和を図る。建物全体は、伝統的な窯(かま)をモチーフにした独特の形状だ。

UCCA Clay外観

隈による2400平方メートルの建築空間は、宜興の伝統的な「紫砂」の色調を反映した手焼きテラコッタタイルで覆われている。これは隈にとって意外にも初めての粘土を主要素材とした建築プロジェクトだ。

美術館は橋のような構造で、片側が展示スペース、小さめのもう片方はカフェが入り、中空でつながっている。平日日中でもひっきりなしに観光客が訪れ、美術館の前でセルフポートレートを撮ったり、自分で流す音楽に合わせて踊ったり楽しんでいた。

開館展は岐阜県現代陶芸美術館のコレクションを中心に

開館展「器之道」(英題: The Ways of Clay)は、2024年10月19日から2025年2月23日まで開催中だ。岐阜県現代陶芸美術館が所蔵する「美濃国際陶芸祭」受賞作品を中心に、世界17ヶ国から集まった65名のアーティストによる69点の作品が展示されている。

会場風景より
阿奴 レクイエム 1995
川上智子 花器 1998

「自然之籽(Seeds of Nature)」、「几何之构(Geometric Structure)」、「冥想之园(Garden of Meditation)」という3つのテーマで構成されており、日本の美濃の焼き物も多いが、国際的にもバリエーション豊かな作品が並ぶ。

会場風景より
会場風景より:(左から)麻汇源 瓷器系列 2017、クリストファー・マーク・ガストン 山峰2000 1992、加藤智也 Topological Formation 2016

展示スペースは2フロアに分かれていて、階段で2階に登るつくりになっている。展示デザイナーのAnna Xiaoran Yangは、隈研吾の建築哲学に呼応し、不規則の多角形で展示台を構成した。無垢材を用いて陶芸を引き立てている。

黄思达 一百个饭碗 2016
UCCA Clayの内観

UCCA Clayは、中国の現代陶芸を振興し、国際的な文化交流を促進するための新たな拠点として、大きな期待を背負っている。折しも昨年末から、日本からの中国への渡航ビザは2025年いっぱいまで緩和されている(2025年2月現在)。建築ファンのみならず陶芸好きにも気になる存在のUCCA Clay、上海や南京から足を伸ばしていく価値はありそうだ。

UCCA Clay外観 撮影:朱迪(AGENT PAY工作室)

Xin Tahara

Xin Tahara

Tokyo Art Beat Brand Director。 アートフェアの事務局やギャラリースタッフなどを経て、2009年からTokyo Art Beatに参画。2020年から株式会社アートビート取締役。
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