2020年、東京メトロ日比谷線が開通以来56年ぶりにして初の新駅「虎ノ門ヒルズ駅」が開業。その駅から直結の「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」がいよいよ10月6日に開業する。2014年の森タワー開業から段階的に進化を続けてきた虎ノ門ヒルズだが、今回のタワーの開業をもってついに完成。六本木ヒルズにも匹敵する規模になった。
「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」の設計を行ったのはレム・コールハース率いる「OMA」の重松象平。OMAとして都内では初の大規模建築でもある。
「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」の最上階に位置する「TOKYO NODE」は、イベントホール、展覧会を行うギャラリー、ミシュランで星を獲得したシェフによるレストラン、インフィニティプールのあるルーフトップガーデンなどが共存する、バラエティに富む情報発信拠点だ。森ビル株式会社 新領域企画部でTOKYO NODEの企画を担当する杉山央は「NODEは“結節点”を意味します。世界と日本、人と人をつなぎ、ビジネス、アート、エンターテインメントを通して人々のクリエイティビティを刺激する都市にしたい」と話す。
同所のオープニング・エキシビションを飾るのは、真鍋大度・石橋素が主宰するライゾマティクスとMIKIKO率いるイレブンプレイによる新作『Syn : 身体感覚の新たな地平』。地上45階、天高最高15m、総面積約1500平米ものTOKYO NODEの巨大展示空間の精巧な舞台美術の世界に、体験者自ら足を踏み入れ、それぞれの物語を選択していく本作は、まさに没入型のパフォーマンスアートだ。
24名のダンサーが織りなすストーリーは、AIが人類を解析するというプロローグ、巨大な可動式の「壁」とダンサーが空間を変容させ、鑑賞者は新たな世界の生成を体験するメインストーリー、そして、「音楽」にフォーカスしたエピローグからなる。所要時間は70分で、会期は10月6日〜11月12日。12月5日からは蜷川実花展が予定されている。
森ビルと言えば各「ヒルズ」のランドマークとなるようなパブリックアートにも力を入れていることでも知られるが、今回「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」では大庭大介、ラリー・ベル、レオ・ビラリール、N・S・ハルシャの作品が新設。虎ノ門ヒルズにはすでに内海聖史、森万里子、ジャウメ・プレンサ、ジャン・ワン、ツァン・キンワー、フランシス真悟らの作品が設置されているため、パブリックアートを訪ね歩くだけでも楽しそうだ。
駅前広場「ステーションアトリウム」に直結する、地下2階のT-MARKETは約3000㎡のスペースにカフェ、ダイニング、ブルワリー、バーラウンジ、角打ちなどの多彩な飲食店やスイーツ、チーズとワイン、花、雑貨などのショップが集まる。
10月6日時点では14店舗がオープン(11月24日にさらに十数店舗がオープン)するが、なかでもトランジットジェネラルオフィスが運営する「dam brewery restaurant」は、アーティストの友沢こたおのアートワークが飾られ、ロゴデザインやネオンワークを平林奈緒美が担当、空間全体は片山正通率いるWonderwall®︎が手がけるなどこだわりが光る店舗。自家醸造のクラフトビールと完全紹介制レストラン「No Code」オーナーシェフ米澤文雄が監修したフィッシュアンドチップスなどフードメニューを提供、ランチの価格帯は1000円台のため気軽に楽しむことができそうだ。
「グローバルビジネスセンター」を目指す虎ノ門ヒルズのなかでTOKYO NODEをはじめとするクリエイティブな試みはどのような存在になっていくのか。そして、羽田空港からのアクセスは最短18分で海外観光客も多く見込まれる虎ノ門ヒルズ一帯はどのような飛躍を見せ、麻布台ヒルズや六本木ヒルズとの相乗効果はいかほどのものになるのか。今後が気になる注目エリアの誕生だ。
野路千晶(編集部)
野路千晶(編集部)