公開日:2024年10月10日

東京ステーションギャラリー、2025年の展覧会スケジュールが公開。「藤田嗣治 絵画と写真」や宮脇綾子展など

「写真」を通じて藤田嗣治の絵画制作を再考する展覧会や、生誕120年となる宮脇綾子展、タピオ・ヴィルカラの日本初大規模個展など6つの展覧会が発表された

ドラ・カルムス《猫を肩にのせる藤田嗣治》

1988年から東京駅丸の内駅舎内で活動を続ける美術館、東京ステーションギャラリー。このたび、同館で2025年に開催される展覧会のラインナップが発表された。6つの展覧会を見どころとあわせて紹介する。

「生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った」/2025年1月25日~3月16日

身近な物を対象に、布と紙によって親しみやすい作品を作り続けた宮脇綾子(1905〜1995)。野菜や魚など主婦として毎日目にしていた物をモチーフに、徹底的な観察や研究により、高いデザイン性と繊細な色彩感覚に支えられた作品群を生み出した。本展ではアプリケ、コラージュ、手芸などに分類されてきた彼女の作品を、美術史の言葉を使って分析することで、宮脇の芸術に新たな光を当てようとする試み。約150点の作品と資料を造形的な特徴に基づいた8章に分けて紹介する。

宮脇綾子《切った玉ねぎ》1965 豊田市美術館

「タピオ・ヴィルカラ 世界の果て(仮称)」/2025年4月5日~6月15日

フィンランドのモダンデザイン界で存在感を放ったタピオ・ヴィルカラ(1915〜1985)の日本初となる大規模個展。1940年代後半から1950年代にかけて、イッタラ社のデザインコンペ優勝、ミラノトリエンナーレへの3度の入賞などによって脚光を浴びたヴィルカラは、自然の生命力や躍動にインスピレーションを受け、「世界の果て」を意味する《ウルティマ・ツーレ》をはじめとするガラスの名品や、陶磁器、カトラリー、家具、木のオブジェ、ランドスケープアートなど幅広い創作活動を展開した。

エスポー近代美術館の協力で行われる本展では、タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団コレクションおよびカッコネンコレクションから、プロダクト、ガラスや木による彫刻、写真など約300点を展示。プロダクトデザイナーとして、そして彫刻家、造形作家としてのヴィルカラの本質に迫る。

タピオ・ヴィルカラ《ウルティマ・ツーレ》(部分) 1969 Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art © KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2024 C4785 photo © Ari Karttunen / EMMA

「藤田嗣治 絵画と写真」/2025年7月5日~8月31日

藤田嗣治(1886〜1968)の絵画制作を、「写真」を通じて再考する展覧会。世界中を旅した藤田は、生涯にわたって数千点におよぶ写真を残した。本展では、藤田の絵画に現れる写真の断片を探り当て、写真活用のプロセスを検証するとともに、日本とフランス・エソンヌ県に現存する彼の写真を多数紹介し、藤田の知られざる魅力に迫る。また、写真と絵画によって重層的かつ巧妙に演出された藤田自身のイメージにも注目。「描くこと」と「撮ること」を行き来した「眼の軌跡」を追いかけ、これまでにない語り方で藤田を紹介するという。

ドラ・カルムス《猫を肩にのせる藤田嗣治》

「インド更紗(仮)」/2025年9月13日~11月9日

奥深いインド更紗の展開を紹介する展覧会。染織の難しい木綿布に茜や藍などの天然染料を用いて生産されたインド更紗は、宗教儀礼や室内装飾、服飾など様々な用途に使われ、鮮やかな色彩とのびやかデザインが特徴だ。紀元1世紀には主要な交易品として東南アジアやアフリカへと渡り、大航海時代には東インド会社の設立に伴って世界中に輸出されたことから、他国の要望に応じたデザインも作られるようになった。本展では、世界有数のコレクターが集めた選りすぐりの品々が紹介される。

西洋市場向けに作られた壁またはベッドの掛け布(パランポレ) インド南東部沿岸 1740-50頃  Karun Thakar collection, London. Photo: Desmond Brambley

「小林徳三郎(仮)」/2025年11月22日~2026年1月18日

日本近代洋画の改革期に活動した画家・小林徳三郎(1884〜1949)。若者たちが結成した前衛洋画家集団フュウザン会で活躍し、画業半ば頃からは春陽会を中心に作品の発表を続けた。鰯や鯵といった魚を数多く描いて評価を獲得し、やがて自分の子供たちをモデルにするようになり、風景、海などの題材を親しみやすく洒脱な作品に描き上げた。本展では、小林が描いた日常的な光景を紹介するほか、彼をとりまく美術動向にもフォーカスする予定。

小林徳三郎《鰯》 1925頃 碧南市藤井達吉現代美術館

「超無限の探究者 大西茂の写真と墨象(仮)」/2026年1月31日~3月29日

数学から写真、そして墨象へと独自の道を歩んだ芸術家・大西茂(1928〜1994)の日本初となる回顧展。1950年代に位相数学に基づく独創的な写真と墨象を発表した大西は、瀧口修造、具体美術協会、ミシェル・タピエといった同時代のパイオニアたちを瞠目させ、現在も再評価の途上にある。展覧会では、ニューヨーク近代美術館をはじめ欧米でも高い評価を獲得した「知られざる異才」の探究に光を当てる。

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