国内外の近代から現代の美術を取り扱う複合文化施設・東京オペラシティアートギャラリー。多岐にわたるテーマの企画展を、年に4回開催してる。2024年の展覧会スケジュールが公開された。企画展と同時開催されている国内の若手作家の紹介を行うシリーズ「project N」も見逃せない。展覧会ラインナップの見どころと「project N」の作家を紹介していく。
同時開催:収蔵品展079 特別展示 没後50年 難波田史男
1960年代の日本において、「イラストレーション」「イラストレーター」という言葉を広め、時代を牽引してきた宇野亞喜良(1934〜)。本展は、宇野の初期から最新作までの全仕事を網羅する過去最大規模の展覧会である。1950年代の企業広告をはじめ、1960年代のアングラ演劇ポスターや絵本・児童書、近年の俳句と少女をテーマとした絵画など、多彩で貴重な原画や資料等を紹介していく。「魅惑のサウスポー」から生み出される、時代を超越した宇野亞喜良の華麗で耽美な創作世界に迫る。詳細はこちらの記事を見てほしい。
同時開催:収蔵品展080 となりの不可思議(仮称)
ファッションブランド・KENZOの創設者である髙田賢三(1939〜2020)の没後初の大規模個展となる。日本人デザイナーとしていち早くパリに進出し、ファッション界の常識を打ち破るスタイルを次々と生み出してきた髙田。「色彩の魔術師」と呼ばれた髙田の変遷を衣装展示やデザイン画でたどるとともに、幼少期からのスケッチやアイデアの源泉となった資料、彼を支えた人々との交流を示す写真なども紹介する。
同時開催:収蔵品展 081 抽象の小径(仮称)
2017年のベネチアビエンナーレ、2019年のパリポンピドゥー・センターでの回顧展など、近年国際的な高い評価を得ている松谷武判(1937〜)。キャンバスや紙、ボンドや黒鉛など、作品を構成するさまざまな物質が示す表情に生身の身体と五感で対峙することで生み出される松谷の作品、その豊かな多様性は、見る者を魅了してやまない。パリを拠点に版画制作に取り組み独自の有機的フォルムによる空間表現を深め、やがて幾何学的な色面による表現に移行。のち改めてボンドによる有機的フォルムに鉛筆の黒鉛を重ねた作品で独自の境地をひらいてゆく。
同時開催:収蔵品展 082 紙の上の芸術(仮称)
今津景(1980〜)の初となる大規模個展。様々なメディアから採取した画像をコンピュータを用いて加工を施しながら構成し、その下図をもとにキャンバスに油彩で描く手法で絵画を制作する。地球環境問題/エコフェミニズム、神話、歴史、政治、といった要素が同一平面上に並列される画面は、膨大なイメージや情報が彼女の身体を通過することで生み出されるダイナミックな表現だ。
展覧会に合わせて同時開催される、「project N」の若手作家にも注目したい。これは財団法人東京オペラシティ文化財団が1999年にスタートした企画で、年に数人選ばれて展示が続けられている。
和歌や漢詩など、伝統的な文学=言葉をモチーフとして、その情景を視覚化、展開する大城。厳格な形式/様式、事物の記号化や見立てといったことに関心を寄せ、視覚化した最初の作品から見立てをずらしていくことで次の作品を展開させる作家だ。
キリスト教徒である田口は、宗教や信仰をテーマに作品を制作する。綿密なリサーチに基づき、歴史的な図像が引用された画面には、中世、東洋、近代などさまざまな絵画空間が取り込まれ、複数の時間軸が凝縮されている。
紙を支持体に、植物や風景に見える滲みを生じさせるナカバヤシの絵画。都市や自然の中で不自然な状態にある植物(枝を切り詰められた街路樹、人間の基準で 外来種とされる植物)に着目し、これらに自分がなったら、と仮定して描く。
福本健一郎は、植物や自然の様相を観察して、そこに人間の感情、感性を投影しながら制作を行う。福本にとって描くことは、日々の生活のなかで、自然の本質を考え、把握するための探求にほかならない。