2016年5月15日(日)、「MOTアニュアル2016:キセイノセイキ」展や「六本木クロッシング2016展:僕の身体(からだ)、あなたの声」に出展しているアーティストが集い、江東区木場にあるEARTH+ gallery(1階)/ gallery COEXIST-TOKYO (2階)にて東京アートウィーク2016のクロージングパーティーが開催されました。
まずは、「六本木クロッシング2016展」に出品している片山真理さんが壇上からシャンソンを3曲披露。パーティーは夕方の5時開始でしたが、いきなり深夜の渋い雰囲気を醸し出してくれました。
料理は、江東区木場のフレンチ「ア・タ・ゴール」が担当。アーティストや企画者も参加し、美味しい料理とお酒を片手に、アートについて語れるパーティーです。料理の写真も撮影しようと試みましたが、あっというまにみんなのお腹の中に収められ、私のカメラには収まりませんでした。バゲットやキッシュなどおいしそうな料理が提供されていました。パーティー会場は東京都現代美術館から近いこともあり、「MOTアニュアル2016 キセイノセイキ」展や、その参加作家の小泉明郎さんによる無人島プロダクションでの個展を見た後にやってきた人々も多くいました。
そして場が馴染んできた頃、このパーティーの企画者でもあるキュレーター・小澤慶介さん(写真中央)が進行役を務め、森美術館キュレーター・荒木夏実さん(写真右)と、アートフェア東京2016エグゼクティブプロデューサー・來住尚彦さん(写真左)が挨拶。荒木さんは、担当している展覧会「六本木クロッシング2016」展が、現在の世界や日本の中でどのように位置付けられるのか、どのようなことをもたらすのか、何をみようとしているのかをお話しされていました。
続いてのパフォーマンスは、「MOTアニュアル2016」展に出品している齋藤はぢめさんたちの企画。明らかに成人しているであろう、薄化粧をした女性たちが、女子高校生に扮し、ビールを飲み始めます。そして、シナリオがあるのかないのかわからないような、「想像上の女子高生の放課後」をそれぞれ演じ始めます。
ビールをプシュッと開けると観客が「未成年者は飲んじゃダメだよー」と声をかけ、携帯や一眼レフカメラで彼女たちを囲んで多くの人々(主に男性)が撮影をします。予定調和的でも、演じているとわかっていても、記号としての女子高生はやはり消費をしたくなるのでしょうか。しかし、パフォーマンスのおしゃべりは40分くらい続くので、その間観客は料理にもお酒にもありつけず、静かに見続けるしかないので、その拘束を本当は狙っているのではないかと疑い始めました。
次は「MOTアニュアル2016展」に出品している遠藤麻衣さんのパフォーマンス《にんげんになったマリーちゃん》です。人間になろうとするイヌのマリーちゃんの話を、遠藤さんが絵本を観客に読み聞かせます。絵本の内容はプロジェクターで大きく壁面に映し出されます。マリーちゃんには、著作権や法律や倫理が付きまといます。でも、それがあってこその人間。私がんばるわ。というところで、絵本は終わります。
観客は、絵本の話としては終了しても、人間は規制に縛られているだけではないよという希望や、違う世界を垣間見せる何かのパフォーマンスが引き続き始まるのではないかとの期待をもって、ナレーションをする遠藤麻衣さんを見続けます。絵本を読み終わり、バックヤードに帰ってしまうパフォーマーを見て、バラバラに拍手が起きます。
規制だらけだけど、私がんばる!で終わらせる、モヤっとした居心地の悪い感じ。絵本を読み終わった時、私は「きっとこのパフォーマンスはこれで終了だな。そして観客はもっと踏み込んだ作家としてのスタンスを要求するな」と感じながら、パフォーマンスの終わりを体験しました。
そして最後に再度歌う片山真理さん。彼女の両足は義足、左手は指が二本の身体を持っています。舞台用のドレスや装飾品、そして厚めの化粧。私たちは壇上にあがる彼女の外見をみながら歌声を聞いています。彼女もそれを知っているからこそ、アーティストになり、モデルになり、歌手になったと思います。しかしパフォーマンスでは、ただ歌手としての外見を見せる片山真理さん。そこに身体の特殊性は必要ありません。
そうして、クロージングパーティーは和やかな中、幕を閉じました。美術機関が連携して、東京のアートシーンを彩る東京アートウィーク、来年はどんなテーマで開催されるのでしょう。シンポジウムやトークなど様々な催しも企画されます。展覧会を見たあとで、または展覧会を見る準備として、参加してはいかがでしょう。
yumisong
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