国宝 《曜変天目(稲葉天目)》 建窯 南宋時代(12〜13世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
丸の内の静嘉堂文庫美術館で曜変天目に焦点を当てる展覧会「黒の奇跡・曜変天目の秘密」が開催される。会期は4月5日〜6月22日。
12~13世紀の中国で生まれ、日本に伝わり、国宝に指定された曜変天目。完全なかたちで残るものは世界にわずか3点、いずれも日本に現存する。漆黒の釉薬に浮かぶ虹色の光彩が生み出す神秘的な美しさに加え、その製法や伝来には多くの謎が秘められている。本展は、中国と日本における黒いやきものの歴史をたどりながら、最新の研究成果をもとに曜変天目の秘密に迫る。
「天目」は茶碗のなかでも格式の高いものとされる。10世紀の宋時代に中国で喫茶法(点茶法)が生まれた際に作られ、日本には鎌倉時代以降、禅の教えとともに伝わった。茶の湯の世界では、こうした中国産の天目を「唐物天目」と呼び、とくに重視されてきた。本展では、国宝《曜変天目(稲葉天目)》を始め、静嘉堂文庫美術館が所蔵する油滴天目、建盞(禾目天目)、玳玻天目(鼈盞)、灰被天目など、貴重な唐物天目が一堂に会する。
東洋のやきものにおける「黒」は2000年以上にわたる深い歴史を誇る。中国古代の黒陶に始まり、唐・宋時代の洗練された黒釉を経て、さらに日本の桃山・江戸時代へと受け継がれた黒い陶磁器。本展ではさらに、「黒」をテーマに、名刀や刀装具、漆芸の名品も集結する。磨き込まれた刀剣の鉄の輝き、鉄鐔の風合い、漆芸品に施された深い艶と蒔絵のきらめきをたっぷりと堪能できる。
最新の研究成果をもとに、曜変天目のこれまで解明されてこなかった側面を深く掘り下げていく本展。この機会に、黒のやきものの魅力と謎に触れてみてはいかがだろうか。