プレート右上からピクルス、ピーマンと切り干し大根の塩麹きんぴらカレー風味、黒豆のチリ、グリーンサラダ、ヴィネグレットとレモンフムス、甘酒と人参のラぺ、わかめの梅風味、酒粕とヨーグルト、味噌のカボチャサラダ、。左上はフォカッチャ、右上はビートルートのスープ(※旬の野菜を使用するため、メニューが季節ごとに変わります) 撮影:中戸川史明
麻布台ヒルズギャラリー開館記念展となる「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期が11月24日から開幕する。この展覧会にあわせ、スタジオ内食堂として有名で、ヴィーガン・メニューのレシピ本『The Kitchen』(美術出版社、2018)も人気なスタジオ・オラファー・エリアソン・キッチン(以下SOEキッチン)と本展がコラボレーション。カフェ「THE KITCHEN」が11月24日より麻布台ヒルズギャラリーカフェにオープンする。
「THE KITCHEN」のプロジェクトは、SOEキッチンの提案により、麻布台ヒルズギャラリーカフェのチームの一員であるシェフをベルリンのスタジオに派遣したことから始動。日本ではオイルやチーズ、小麦粉、ワインなど多くの食材を航空輸入に頼っており、SOEキッチンが大切にする「二酸化炭素排出量の制御」に取り組むうえで課題のひとつとなっていた。
そこで今回、日本のオリジナリティを表現しつつ航空輸入の必要がない食材として、日本特有の菌「麹」を用いた調理方法を提案。環境への影響も考慮しつつ国内の素材を生かした、唯一無二の料理が完成した。
「ひとつの料理を空間にいる人たちとシェアする体験」をテーマに、ビュッフェスタイルで展開される料理は、在日フランス大使館で副料理長を勤め、名だたるホテルやレストランに従事してきた日本人シェフ、増谷武士が担当している。
「THE KITCHEN」のオープンに先駆けて、「オラファー・エリアソン展:相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」担当キュレーターの片岡真実(森美術館 館長)、德山拓一(森美術館 アソシエイト・キュレーター)がメニューを試食。それぞれに感想を語り合った。
片岡は、メニューに使用された麦味噌などの調味料の斬新な活用法と繊細な味わいに着目し、「様々な甘み、酸味、塩味、スパイシー感があって、どれも複雑なシーズニングがある。それらが味覚のいろんな階層でつながっていて面白い」とコメント。
今回お気に入りのメニューについて聞くと徳山は「どれもおいしいが、とくに黒豆のチリ、ビートルートのスープは印象的。どのメニューを食べても健康になりそう」回答。片岡は「全体のバランスが良いと思った。オラファーの作品テーマにもある“調和”が食でも体現されている」と言い、食後の満足感についても太鼓判を押した。
料理はビュッフェスタイルでランチが3850円、カフェ1650円、ディナー4620円(すべて税込)。メニューはビートルートのスープ、麦味噌と野菜の味噌汁、甘酒と人参のラぺ、わかめの梅風味、黒豆のチリ、グリーンサラダ、ヴィネグレットとレモンフムス、酒粕とヨーグルト、味噌のカボチャサラダ、ピーマンと切り干し大根の塩麹きんぴらカレー風味、味噌グラッセカリフラワー、フォカッチャ、玄米と黒米のおにぎり、野菜のタルト(※ディナータイム限定メニュー) 、パンプキンキャロットケーキで、旬の野菜を使用するため、メニューは季節ごとに変わる。
エリアソンの思想をより深く伝えるため、環境への配慮や食を通じたコラボレーションなど、さまざまな取り組みを実践している本展。展覧会のチケットについても、一般的な入場券とはひと味違う、特別なメニューが用意されている。種類は(1)通常チケット(2)作品体験付チケット(先着申し込み発売)(3)カタログ付チケット(数量限定発売)の全3種類。
なかでも注目は作品体験付チケット(先着申し込み発売)。振り子の動力のみで稼働し、紙の上に螺旋状の線を生成し続けるドローイングマシン作品《終わりなき研究》(2005)を自身で動かし、A3サイズのオリジナルのドローイングを持ち帰れる貴重な体験型のチケットだ。
各種チケットは展覧会特設ページから予約可能。
野路千晶(編集部)
野路千晶(編集部)