京都国立近代美術館で「没後100年 富岡鉄斎」が、4月2日~5月26日まで開催される。
幕末の京都の商家に生まれ、近世都市の商人道徳を説いた石門心学を中心に、儒学・陽明学、国学・神道、仏教等を学び、学識に裏付けられた豊かな画業を展開した「最後の文人画家」富岡鉄斎。良い絵を描くためには「万巻の書を読み、万里の路を行く」ことが必要であるという先人の教えを守り、北海道から鹿児島まで各地の勝景を探り、人間の理想を説いた鉄斎の文人画は、自由闊達で大胆な新しさで、京・大阪の町の人々だけでなく、画壇の巨匠たちや新世代の青年画家たちから高く評価されてきた。
本展は、1924年の大晦日に数え年89で亡くなった鉄斎の没後100年を記念して、画業と生涯をあらためて回顧する展覧会。名作として取り上げられてきた作品や、これまで目にすることのできなかった作品、近年再発見された作品も展示する。
見どころは、代表作である六曲屏風一双の大作《富士山図》、《妙義山図・瀞八丁図》、《富士遠望図・寒霞渓図》《阿倍仲麻呂明州望月図・円通大師呉門隠栖図》(重要文化財)など、鉄斎の画業を語るうえで欠かすことのできない作品たち。
一般に公開されたことのない《土神建土安神社図・椎根津彦像・平瓫図》三幅対や、画集のモノクロ写真で知られるのみだった初期の屏風《山水図》、50年振りの公開となる《渉歴余韻冊》など、従来では見ることのできなかった作品も紹介する。
また、鉄斎の画室に置かれていた硯や墨、筆、絵具、絵具皿、机など、遺愛の品々も多数展示。印章に特別な愛着を持っていた鉄斎の「印癖」を伝える膨大な印章コレクションの中から、彼の印譜《鉄老斎印景》に載るものを中心に120顆を公開。
鉄斎の生きた時代には、縁起物として都市の商人たちの間で親しまれていたのだという文人画。京都では27年振りの開催となる展覧会で、鉄斎の文人画の魅力を味わいたい。