運河に囲まれた水辺の街、天王洲アイル。都心の喧騒から離れて、穏やかな独特の時間が流れるエリアです。天王洲アイルと聞いてアクセスがよくないイメージを持つ人もいるかもしれません。でも、ちょっと待ってください。実は品川駅から歩いて行けるとしたら?
運河沿いをゆっくりと歩いて15分程度。そこにはギャラリーはもちろん、アトリエや伝統画材を扱うショップ、人気のブルワリーレストラン、さらには保存食セレクトショップまであるのです!天王洲アイルに対するイメージも、少し変わるのではないでしょうか。
そこで、今回は品川駅から運河沿いを歩いて、天王洲アイルまで歩いてみることにしましょう。ベイサイドの街並みは眺めも楽しく、ところどころでアートも鑑賞でき、デートコースにもピッタリ!
まずは品川駅からスタート。待ち合わせるとしたら駅の東側、港南口がオススメです。
高くそびえるオフィスビルの間を抜けていくと、まるでニューヨークのセントラルパークのような木々に囲まれた公園が現れます。その名前も、「品川セントラルガーデン」。平日は会社勤めの人たちで溢れる品川ですが、休日は人も少なく、いつもとは違う、ゆったりとした雰囲気が漂います。
公園を抜けると、東側、運河方面へ歩いていきましょう。高層ビルは姿を消し、下町らしい風景が姿を現します。
少し歩くだけでガラリと様変わりする、街の変化が楽しい。そして運河にかかる橋の上に立つと、もう天王洲アイルの建物が見えてきました。少し遠くに見えるの建物は、醸造所を併設したブルワリーレストラン「T.Y. HARBOR」。その左奥には、何やら巨大な壁画のようなものも見えますね。
運河沿いはランニングコースにもなっており、休日のランを楽しむ人たちの姿もチラホラ。運河沿いの景色を楽しんでいるうちに、もう天王洲アイルエリアに到着です。
橋を渡ると、そこは「天王洲アイル ボンドストリート」と呼ばれる通り。かつて石油や資材を保管する倉庫が立ち並んでいましたが、時代とともに元倉庫街はおしゃれな街に生まれ変わりつつあります。
人気レストランも多いこのあたりですが、「保存」をテーマにした「TERRA CAFE BAR(テラカフェバール)」も変わり種でオススメ。
この店では世界中の保存食が集められおり、その場で解凍など調理して食べることができます。冷凍食品、瓶詰め、フリーズドライなどなど。見たことのない食品が並ぶ店内は、好きな人にとっては堪らない空間のはず。
さて、ボンドストリートをもう少し先に行くと、ペインティング中のアーティストたちに出会えました。ちょうどこの日は、「壁画」アートフェスティバルの「POW! WOW! JAPAN」の期間中。運河沿いから見えた巨大な壁画の正体は、このイベント。街がストリートアートで埋め尽くされていきます。
※POW! WOW! JAPANの会期後も一部の作品が残っています。
天王洲アイルで保管保存業や不動産事業を展開する寺田倉庫は、美術品やワイン、フィルムなどの専門性の高い商品の保存・保管技術で高い評価を得ています。アート分野の活動も多く、運営する「T-Art Gallery」は倉庫の空間をリノベーションしたギャラリーです。10月30日(金)から11月22日(日)までは、寺田倉庫が開催するアートアウォード「TERRADA ART AWARD 2015」の入選者展示も開催しています。
寺田倉庫は、アーティスト向けのアトリエも運営しています。その名前は「T-Art KÔBÔ」。
ギャラリーから少し離れた、もともと倉庫だったスペースをリノベーションしており、大小さまざまな広さの部屋を用意しています。このアトリエは、「TERRADA ART AWARD 2015」の副賞として、無償提供も予定されているそうです。ゆくゆくは、ギャラリーへの貸し出しやアートコレクターへの開放も検討しているとのこと。アーティストの創作活動を支援する新たな拠点になりそうです。
T-Art Galleryからすぐそばに、建築家・隈研吾さんによる、竹のすだれをイメージした曲線が特徴的な建物が! こちらは希少な伝統画材を一堂に揃えた「PIGMENT(ピグモン)」というラボです。
顔料だけでもなんと約4200種類、骨董的価値の高い硯(すずり)や、さまざまな大きさや毛の種類の筆が揃っています。高価な硯だと、驚きの価格にのぼることも。
PIGMENTのもうひとつの特徴は、画材の研究で博士号を修得したエキスパートが店内におり、画材の特性から使用方法までアドバイスをしてくれるそうです。画材の使い方を学べるワークショップも随時開催しており、単なる画材の販売だけでなく、アカデミックな役割も担っています。
さて、天王洲アイルエリアを巡る1日、いかがだったでしょうか。天王洲アイルに拠点を構える寺田倉庫は、ウォーターフロントにある倉庫の立地と構造の特徴を生かして、さまざまなアートの表現にチャレンジしています。アートを求めて、週末は天王洲アイルへ。そんな休日の過ごし方が、これからはもっと広まっていくのかもしれません。
Text: 玉田光史郎 Koushiro Tamada
Photo: Tadamasa Iguchi(1枚目およびアワードの会場写真除く)