東京国立博物館で特別展「空也上人と六波羅蜜寺」が3月1日から開催される。会場は本館特別5室、会期は5月8日まで。本展では重要文化財を含む、京都・六波羅蜜寺所蔵の貴重な仏像を鑑賞することができる。
注目の《空也上人立像》(13世紀)は六波羅蜜寺の創設者・空也上人を模した彫刻だ。東京での展示は実に半世紀ぶりとなる。
空也上人は平安時代の僧侶。南無阿弥陀仏と唱えることで極楽へ辿り着けるという、阿弥陀信仰を広めた。「市聖」(いちのひじり)と称されるように、全国を行脚し困った人を助け、貧しい人や病人に施しを与えるなど、つねに市井の人々に寄り添ってきた人物だ。
この立像が作られたのは、空也の没後200年以上が過ぎた13世紀。運慶の四男である康勝による作品だ。彫像は空也が歩みを進めている姿を模している。その口から出ているのは、空也上人が「南無阿弥陀仏」と唱えたことで具現化した、阿弥陀如来の姿。念仏の文字数に対応するように6人の仏に分かれている。
《空也上人立像》のみならず、六波羅蜜寺所蔵のほかの名品にも注目だ。《四天王立像》は空也が造像を発願したもので、10世紀に作られた持国天、広目天、多聞天と、13世紀制作の増長天で構成される。《四天王立像》を従えるように展示されている《薬師如来坐像》(10世紀)は空也の没後、六波羅蜜寺を再興した中信の時代の作品。
平家は12世紀後半に六波羅に邸宅を構えており、《伝平清盛坐像》(13世紀)もまた六波羅蜜寺とゆかりのある像だ。
平成館では現在「ポンペイ」展が開催され、秋からは開館150周年を記念する「国宝 東京国立博物館のすべて」展も予定されている同館。引き続きトーハクから目が離せない1年だ。