公開日:2023年11月17日

約30年ぶりの大規模な回顧展。「北川民次展 ――メキシコから日本へ(仮)」が2024年6月から3都市で巡回へ

愛知、東京、福島の3都市を巡回。約180点で、日本とメキシコを横断して活躍した越境的な画家・北川民次に迫る。

家族写真 1943 宮城県美術館蔵

メキシコで学び二科会で活躍した洋画家として知られている北川民次(1894-1989)。独特なデフォルメによる生命感あふれる作風で知られ、早くから児童美術教育のすぐれた実践者でもあった。生誕130年記念となる「北川民次展 ――メキシコから日本へ」が、2024年6月29日に開催予定の愛知・名古屋市美術館を皮切りに、東京・世田谷美術館(2024年9月21日~11月17日)、福島・郡山市立美術館(2025年1月25日~3月23日)の3都市を巡回する。

ロバ 1928 愛媛県美術館蔵
トラルパム霊園のお祭り 1930 名古屋市美術館蔵

メキシコで様々な作家と交流しながら自らの創造性を育んだ北川は、洋画だけでなく、メキシコ前衛運動と共鳴して版画を制作し、帰国後もメキシコ壁画運動の影響を受けて壁画制作を志向し続けた。本展では、同時代のメキシコで活動した画家ルフィーノ・タマヨや写真家ティナ・モドッティの作品を中心に、北川と親交のあった藤田嗣治などの作品もあわせて紹介し、メキシコと日本の架け橋となった作家の姿に注目する。

北川民次 1949 撮影:松谷錦二郎

展示は第1章からエピローグまで、6つの章で紹介される。洋画家、壁画家、絵本作家、そして美術教育者など、様々な方面で活躍した北川の半生を紐解くことができる。

北川はアメリカ時代に劇場美術の仕事をする傍ら、アート・スチューデンツ・リーグに在籍する。ジョン・スローンら社会派の画家たちから学んだ「民衆を描く」姿勢は、生涯を通じて制作における重要なテーマのひとつとなった。日本へ帰国後、メキシコ的な風俗を壁画のような大画面に描き、二科会の会員になる。絵画は美しく装飾的で人の心を癒すべきだという考えを否定し、強いメッセージや思想を表現する作品を描こうと葛藤し続けた様子がうかがえる。

農漁の図 1943 東京都現代美術館蔵

北川は、「壁画の下絵や部分絵」としてではないタブロー絵画に取り組むにあたり、ルフィーノ・タマヨの造形表現を参照。宙を飛ぶ女性や黒い人影など、シュルレアリスムに接近した不思議な絵画空間を描き出していく。戦時および戦後に描かれた象徴的な風景は、しだいに社会問題への婉曲的な批判にもつながっていった。

アメリカ婦人とメキシコ女 1935/1958 郡山市立美術館蔵

瀬戸市や名古屋市内に現存する壁画や「北川民次のアトリエを守る会」による機関誌『バッタ』など、北川民次の芸術を後世へ引き継ごうとする活動の紹介を通して、いまなお人々に愛される北川民次像にも注目したい。

東山動物園児童美術学校集合写真 1949 撮影:松谷錦二郎

1996年に開催されてから約30年ぶりの回顧展となる本展覧会。作家ゆかりの東海地方をはじめ、宮城、新潟、栃木、愛媛など全国各地に所在している作品を一挙に見ることが出来る貴重な機会となりそうだ。

生誕130 年記念 北川民次展 ――メキシコから日本へ(仮)

会場・会期(予定):
【愛知】名古屋市美術館 2024年6月29日~9月8日
【東京】世田谷美術館 2024年9月21日~11月17日
【福島】郡山市立美術館 2025年1月25日~3月23日

主催(予定):
【愛知】名古屋市美術館、中日新聞社、日本経済新聞社、テレビ愛知
【東京】世田谷美術館、東京新聞
【福島】郡山市立美術館

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