14年にわたりアートイベントとして多くの若手アーティストを送り出してきたGEISAIが、20回を区切りに新しいステージに進み、中野ブロードウェイ内にあるカイカイキキのギャラリーZingaroに、世界中からグラフィティ&ストリートアーティスト、もしくはアクロス・ザ・ボーダーなクリエーターを招聘している。現代美術的な文脈から解放された、絵を描く開放感を主軸とした展覧会のシリーズ『GEISAI∞infinity』プロジェクトに、近年、絵を燃やしたり汚したりする新機軸で世界的な注目を集めるMr.が登場。日本では6年ぶりの個展となる。
■Mr.はなぜキャンバスを燃やさなくてはならなかったのか
Mr.:「絵を焼く」という手法自体は、もう十年以上前に一度チャレンジしていたんですけど、昨年後半にシアトルの美術館でやった個展に、2006年に制作したその作品も出品したんです。久々に見たらとんでもなくいい!と思ったので、また絵を焼き始めて、今年の冬に10点ぐらい作りました。いまアートマーケットのトレンドというか、グラフィティっぽいものや汚すことがかっこいいという流れはあって、たとえばガゴシアンギャラリーで活躍するルドルフ・スティンゲルや「21世紀のバスキア」とも言われているオスカー・ムリーリョなんかも、落書き的なものや汚した感じの作品がありますね。
ただ、それを僕がそのまま真似しても意味がないので、日本のアニメ的なモチーフとグラフィティ的な方法論をあわせて作品を作る人ってあまり他にいないから、この方向はおもしろいかなって。
昨年僕の精神状態が辛かった時期があったことも、少し関係しているかもしれないですね。自分でも、世の中に対する怒りを作品で爆発させてる感覚はあるんです。ニートやメンヘラの人達に興味があって、最近アニメとか見ないでYouTube、ニコ生、ツイキャスで派遣労働者の人達の配信を見たりするんですけど、どん底の人っていっぱいいて、昔はそういう人達の生活って社会からは見えなかったけど、いまはネット配信とかで見れてしまい、深い人の哀愁に見入ってしまいます。
あとは、80年代ヤンキー文化を入れたりしています。デコトラ的な要素や、怖い感じの要素はよくあると思うんですけど、もっとノリの軽いヤンキー文化感(例えばシャコタン☆ブギのような)というのは、あまりなかったし、いいなと思って。
Mr.
1969年キューバ生まれ。1996年創形美術学校卒業。2013年「Sweeet!」エマニュエル・ペロタン・ギャラリー(香港)、2014年「Live On: Mr.’s Japanese Neo-Pop」シアトル美術館(シアトル)など海外での活動が注目を集める。
Text: Ino Shin
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