「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」
同展は、さまざまな社会問題について親子で考えることができる展覧会。地球環境や教育、グローバリズムなどについて考えるきっかけとなる作品を展示。参加作家は、会田誠と妻の岡田裕子、中学2年生の息子・会田寅次郎からなる会田家をはじめ、2014年に急逝したデザイナーのヨーガン レール、岡﨑乾二郎による「はじまるよ、びじゅつかん(おかざき乾じろ 策)」、オーストラリアを拠点に活動するフィリピン出身の作家アルフレド&イザベル・アキリザンの4組。会田家による学校や社会に対する批判精神をもとにした作品や、ヨーガン レールの「最後の仕事」であり、生前に移住先の沖縄・石垣島の海岸に流れ着いたゴミを使って制作されたランプなどが展示される。
美術家の両親と中学生の息子が共同で作り上げたものとは?
岡田:家族で展示するって珍しいですけど、家庭の日常とそんなに変わらないです(笑)。共同作業ってこういうことだよねって思うし、たとえば何か衝突があったりしたとしても、やっぱり普通の生活の中の延長線です。
映像作品、インスタレーション、公開制作など、表現方法も三者三様。アーティスト一家の日常の創作風景を反映しつつ、家庭と社会とアートの接点が見えてくる展示だ。取材はオープニング直前の追い込みの最中に行なわれた。
岡田:美術って、作品ができるかどうかギリギリまでわからないので。もちろん私や会田さんは慣れているから最後には絶対できると思っているけど、できて当たり前のことをしてもつまらないから、できるだろうという希望的観測のギリギリのところでいつも作品を作るんですね。そこでさらに自分の子供が入ってくると、さらにリスキーというか、直前までハラハラしたり。でもその分喜びも大きい。そこは普段の生活より少し拡張されている感じがします。
そんな状況の中で制作されたのが、撤去問題で大きな物議を醸した部屋中央の檄文。「文部科学省に物申す 会田家」と銘打たれたこの檄文について、会田誠は取材時にこう語っていた。
会田:家族それぞれが日常的に感じている学校や社会、日本の教育に対する不満を集めたんです。寅次郎は学校の生徒としての、岡田さんは保護者としての体験的な実感を述べていて、僕はもうちょっと違う視点から国家や社会に対する不満を書きました。普通の家庭で生活している人間でもこんなふうに意見を表明してもいいんだということを、子供達に伝えたかったんです
岡田:檄文は会田さんが言い出して、寅は嫌がるかなと思ったら、意外と前向きに「やりたい!」って。どんなの?って訊いたら、カバンが重いとかで、そんなことかって(笑)。でも、今回の展示は中学生の生の声が聞けるのが醍醐味だと思うので。
この檄文をめぐり、展覧会が始まって約1週間がたった7月23日と24日、美術館側から、出品作のうち2作品に対する改変撤去要請があった、という趣旨のTwitter上の投稿から、SNSを中心に大きな波紋が広がった。後日タンブラーに公開された会田の声明によれば、改変撤去要請の理由は、「観客からのクレームが入り、それを受けて東京都庁のしかるべき部署からの要請もあり、最終的に美術館として協議して決定した」というもの。その後の結論としては、作品は改変撤去されず、そのままの形で残されることになった。
そのような経緯もあり、檄文の話題が先行する形となったが、実際の展示では三人の生活と日本の社会や教育とのせめぎ合いがユーモラスに表現されている。
会田:寅次郎の《TANTATATAN》という映像作品があるんですが、実はこれがダークホースというか、今後この展示の中心に躍り出るかもしれない(笑)
会田寅次郎と卯城竜太(Chim↑Pom)、美術家・松田修による《TANTATATAN》をめぐる対談は、SWITCH本誌 Vol.33 No.9 ヒリヒリするアートで!
会田誠
1965年新潟県生まれ。1989年東京藝術大学美術学部絵画油画専攻卒業。絵画のみならず、写真、立体、パフォーマンス、インスタレーション、小説、漫画、都市計画など表現領域は国内外多岐にわたる。
岡田裕子
1970年東京都生まれ。1993年多摩美術大学絵画科油画卒業。2010年よりオルタナティブ人形劇団「劇団★死期」主宰。新刊「現代アート探偵ゲンダイチコースケの事件簿第一弾〜銀髪の賢者と油の牝狗〜」(松下学・阿部謙一との共著)が9月発売される。
Text: Ino Shin
SWITCH-TAB
SWITCH-TAB