国際的なビジュアルアーティスト・電子音楽作曲家として活躍する池田亮司の展示「特別展示:池田亮司」が金沢21世紀美術館でスタートした。21世紀美術館の今年のテーマ「アート×新しいテクノロジー」に合わせた本展示の会期は、11月18日〜2024年5月12日。
池田は、音やイメージ、物質、物理現象、数学的概念などの様々な要素の精緻な構成を用いて、見る者/聞く者の存在を包みこむライブ・パフォーマンス、インスタレーションを発表。2000年代初頭から自然科学領域のビッグデータを視覚化・音響化へと転換することによって、この世界を新たな視点で認識するための表現を追求してきた。
今回は新作インスタレーション《data.gram [nº6]》が発表される。これは池田による大規模なオーディオビジュアルインスタレーション《data-verse》3部作(2019-2020)を再構築した新シリーズで、23点の映像作品で構成。作品の元データとなっているのは、CERN(欧州原子核研究機構)、NASA、ヒトゲノム計画など、様々な研究のオープンソースから収集された膨大な自然科学領域のビッグデータだ。
《data.gram [nº6]》は、3つの異なるスケールの世界を描いている。1つ目は、量子状態の素粒子から、原子、分子、ウイルス、結晶、DNA、タンパク質、細胞、粘菌にまでわたる人間の目には見えないミクロな自然の世界、2つ目は脳や身体から、都市、気象、インターネット、航空交通、人工衛星まで地球規模にいたる私たち人間をとりまく世界。そして3つ目は地球から太陽系、銀河系、超新星爆発、超銀河団そして観測可能な宇宙の果てなどマクロな自然の世界を描写する。各スケールの世界は、膨大な科学データを通して極めて精密なコンピューター・プログラミングによって生成されており、私たちの存在を支える自然の、その隠された側面を包括的にとらえるものだ。
展示空間に並ぶ自然界の異なるスケールに対応した23点の映像作品は、すべて並列に配置され、すべてが正確に同期し合って、全体が一つの楽曲のように調和する構成となっている。ミクロからマクロにいたる様々なスケールの間を、観客自身が実際に移動し、横断できるような体験になることだろう。